2010年08月19日-2
森信中大法科大学院教授が金融所得一体課税を提唱

 森信茂樹中央大学法科大学院教授が金融税制調査会で、二元的所得税・金融所得一体課税の創設を提唱した。金融所得課税について、金融所得の性格(グローバルな金融取引、足が速い所得、租税回避が容易等)や先進諸国の税制との整合性を踏まえつつ検討することが必要で、わが国の豊富な金融資産をどう経済成長に結びつけるか、また、高齢化の下で貴重な貯蓄をどう活用するかという政策的観点も考えることが必要としている。

 氏の提案によると、先進諸国の金融税制は、累進税率をとる勤労所得と「分離して定率・低率で課税する」二元的所得税の考え方の下にある。OECDもIMFも、これからの税制の方向として、二元的所得税を挙げている。わが国でも、本格的な所得税制として、二元的所得税・金融所得一体課税を考えるべきである。なお、OECD租税委員会は、わが国税制はすでに「セミ・二元的所得税の国」と位置付けていると指摘している。

 金融所得一体課税の具体的方向としては、金融所得の損益通算先範囲の拡大と損益通算期間の延長、さらには金融所得の創設で、市場関係者の透明性を確保する見地から、工程表を作成し議論を進めていくことが必要だ。他方、証券優遇税率(10%)については、所得税累進機能の強化という観点から、既に閣議決定されている「一体化を進めることと引き換えに本則税率(20%)に戻す」ことは容認すべきとの考えだ。

 また、金融所得税制は「資本」にかかる税制として、法人税とセットで考えていく必要があり、本則税率に戻す際の増収分は、成長戦略として引下げが検討されている法人税率の課税ベース拡大に充てることも一案としている。2010年末に10%の優遇税率が期限切れとなるなか、金融庁、証券業界等が期限延長を要望しているが、政府・民主党内には優遇措置廃止論も根強く、今後の成行きが注目される。

 森信教授の提案要旨は↓
 http://www.fsa.go.jp/singi/zeiseichousa/siryou/20100804/02.pdf

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