2010年08月16日-1
「今の税金は高すぎる」と思う人が初の過半数割れ

 博報堂生活総合研究所が、首都40キロ圏、阪神30キロ圏に住む20~69歳の男女を対象に実施した「生活定点アンケート調査」では、「今の税金は高すぎる」との回答が1992年の同調査開始以来初めて過半数割れしたことが分かった。同調査は、生活者の意識や行動の変化から将来の価値観や欲求の行方を予測するため、同条件の調査地域・調査対象者に対し、同じ質問を繰り返し投げかける定点観測型のもの。

 調査結果(有効回答数3389人)によると、「今の税金は高すぎると思う」との回答は、消費税が3%から5%に増税された翌年、1998年の74.3%をピークに続落。今年は、過去最低を記録した2008年の前回調査の54.4%からさらに15.7ポイント低下の38.7%まで激減して、最低値を記録した。この背景には、少々税金が高くなっても、破綻寸前の国家財政や不安定な社会福祉制度を立て直して欲しいとの、国民の思いがあるようだ。

 同調査でも、「多少、税金が高くなっても福祉を充実させるべきだ」との回答が、2004年の調査から上昇に転じ、今回は、過去最高だった前回調査の32.5%からさらに7.1ポイント上昇して39.6%と約4割に達した。同研究所では、「今回の調査時期である今年5月は、消費税はまだ世論の大きなテーマになっていなかったが、生活者の税金に対する考え方は既に大きく変化していた」と分析している。

 他のデータに目を向けても、「個人の利益を犠牲にしても国民全体の利益を大切にすべき」という意識が過去最高の67.1%を記録するなど、生活者の意識は「利己から利他へ」と転換しているとみている。長期化する日本の閉塞状況を生きるうちに、多少の個人の痛みはあろうとも、公共の幸せを目指していかなくては、個人の幸せを手に入れられないと、生活者は考え始めているのかもしれない、と推測している。

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