2010年07月26日-2
年金で受け取る保険金、全て所得税非課税ではない

 生命保険金を年金で受け取る場合の二重課税問題で、最高裁は7月6日、「相続開始により相続人が取得した年金受給権に相続税を課し、その年金に所得税を課すことは二重課税に当たる」との画期的判決を下し、国税当局は還付申告対策等、その対応に追われ、生命保険業界でも源泉徴収事務の変更に伴う事務に追われている。しかし同判決で、年金で受け取る部分すべてに所得課税が行われなくなるわけではないので注意が必要だ。

 裁判では、原告の夫が契約した「年金払い生活保障特約付終身保険」により支払われた年金に対して雑所得として所得税が課税されたことについて「二重課税」であるか否かが争われた。それは、死亡保険金4000万円(みなし相続財産)と1380万円(230万円×10年×60%=1380万円・年金受給権)の計5380万円が相続税の課税対象とされ、年金として受け取った初年分の230万円に対し雑所得として所得税が課税されたわけだ。

 つまり、年金受給権として相続税の課税を受けているのに、各年の年金が雑所得として所得税課税が行われるのが二重課税に当たる、というのが最終判断だが、ここで注意したいのは、最高裁が二重課税と認めた年金受給権として評価された1380万円が所得税の課税対象にはならないとしたもので、年金の運用益に当たる920万円(2300万円-1380万円)については、所得税が課税されることになる。

 「年金給付付生命保険」は、受取人のニーズに合った保険といわれる。保険金を一時に受け取ってもどうしてよいか分からず、結局、ただ預金しておくだけというケースが多いという。そこで、保険金の一部を年金でもらうことで、運用は受取人自身が考えなくて済み、保険会社に任せておけばいい。したがって、保険会社に運用してもらった運用益部分は、当然に所得税がかかる。最高裁判決もそこは認めているのである。

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