2010年07月20日-1
民法特例のうち「固定合意」は申請・確認ともに0件

 中小企業のスムーズな経営承継支援のため、「民法の特例」、「金融支援」、「相続税」の3本柱が設けられたのが2009年。「民法の特例」と「金融支援」は中小企業経営承継円滑化法で、「事業承継税制」は租税特別措置法で措置されているが、中小基盤機構によると、「民法特例」のうちの「除外合意」は2009年3月~2010年3月の間で申請が17件、確認が16件されたが、「固定合意」は申請、確認とも0件だったことが分かった。

 先代経営者の生前に、経済産業大臣の確認を受けた後継者が、遺留分権利者全員との合意内容について家庭裁判所の許可を受けることで、先代経営者から後継者へ贈与された自社株式その他一定の財産について、遺留分算定の基礎財産から除外することができる。これが「除外合意」。従来の遺留分放棄は当事者全員が個別に家庭裁判所に申立てを行うことが必要だが、この手続きについては、後継者が単独で申立てができる。

 これに対し、経済産業大臣の確認を受けた後継者が、遺留分権利者全員との合意内容について家庭裁判所の許可を受けることで、遺留分の算定に際して、生前贈与株式の価額をその「合意時の評価額」で予め固定することができる。これが「固定合意」である。後継者の貢献による株式価値上昇分が遺留分減殺請求の対象外となるため、経営意欲が阻害されないというメリットがあるはずだった。

 申請・確認の少なさは、現経営者が「まだまだ若い者には任せられん」と、事業承継に後向きであることに加え、この除外特例により、贈与株式が遺留分減殺請求の対象外となるため、相続に伴う株式分散を未然に防止することができるものの、非承継者が合意になかなか同意しないという現実が見える。「金融支援」についても、申請件数25件、確認件数23件と、鳴り物入りで導入された事業承継支援も前途は厳しいものがあるようだ。

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