2010年07月01日-1
09年度版査察白書、目立った脱税の手段・方法

 先日国税庁が公表した2009年度版査察白書では、210件から総額290億円にのぼる脱税が摘発されたが、同年度中の脱税の手段・方法で目立ったのは、不動産業では無申告、鉱物・金属材料卸、商品・株式取引及び不動産譲渡では売上除外、建設業では架空の原価計上、キャバレー・飲食店では源泉所得税の不納付、人材派遣業では、消費税の課税仕入れに該当しない人件費を課税仕入れとなる外注費に仮装するものなどだった。

 不動産業の無申告事例では、Aは、都市部の土地売買取引において、不動産購入者から依頼を受けて所有者との交渉を行ったことにより多額の業務委託手数料を得ていたが、国内での申告義務がない海外に居住する不正加担者が不動産購入者の仲介業務を行ったように装って、所得税の申告をせずに、不正資金を海外の投資会社で運用していたケースなどが明らかにされている。

 売上除外では、解体工事を営むB社が、解体工事から発生する鉄くずを買入業者に売却し、本業に付随した収入を得ていたが、仮名取引を行った上で、現金で受領した代金を申告除外して所得を過少にしていた事例、また、個人事業者Cは、証券投資信託の譲渡で多額の利益を得ていたが、個人事業による所得しか申告せず、譲渡利益を除外して所得を過少にし、不正資金を新たな投資に充てていた事例などがある。

 建設業の架空の原価計上では、設備工事を営むD社は、不正加担者に対して架空の原価を計上して所得を過少にして申告していた。キャバレー・飲食店の源泉所得税の不納付では、クラブを営むE社は、ホステス報酬から源泉所得税を徴収しながら、実際に支給したホステス報酬金額を過少に記載した報酬一覧表を作成し、これに基づいた過少な源泉所得税のみを納付し、本来納付すべき源泉所得税の大半を納付していなかった。

 国内以外でも、海外に関連した脱税の手段・方法では、(1)タックスヘイブンに設立した関係会社に対して、架空の経費を計上したもの、(2)国内に住所登録をせず、海外居住者を装い、全く申告しないものが見受けられたという。例えば、個人事業者のFは、国内に居住していながら、国内で住民登録をせず、税務署に対して虚偽の国外在留証明書を提出して海外に居住しているように装い、所得税の申告をしていなかった。

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