2010年06月28日-1
査察での告発事案は100%有罪、7人に実刑判決

 査察、いわゆるマルサは、大口・悪質な脱税をしている疑いのある者に対し、犯罪捜査に準じた方法で行われる特別な調査。調査にあたる国税査察官には、裁判官の発する許可状を受けて事務所などの捜査をしたり、帳簿などの証拠物件を差し押さえたりする強制捜査を行う権限が与えられる。この査察調査は、単に免れた税金や重加算税などを納めさせるだけでなく、検察への告発を通じて刑罰を科すことを目的としている。

 刑罰とは懲役や罰金だが、実をいえば、以前は実刑判決はなかった。つまり、執行猶予と罰金刑で済んでいたのだが、懲りない面々に対し“一罰百戒”効果を高めるため、1980年に初めて実刑判決が出されて以降は、毎年実刑判決が言い渡されている。2009年度版査察白書によると、2009年度中に一審判決が言い渡された141件のすべてに有罪判決が出され、うち7人に対し執行猶予がつかない実刑判決が言い渡された。

 平均の懲役月数は14.6ヵ月、罰金額は約1700万円だ。査察の対象選定は、脱税額1億円が目安といわれ、また、脱税額や悪質度合いの大きさが実刑判決につながる。査察で告発されると、社会的信用を失うだけでなく、巨額な罰金刑や実刑判決もありうる。ちなみに、2010年度税制改正で、刑罰は10年(改正前5年)以下の懲役に、罰金は1000万円(同500万円)以下に引き上げられ、この6月1日以降の違反行為について適用されている。

 2009年度査察白書によると、すでに着手した査察事案について、同年度中に検察庁への告発の可否を最終的に判断(処理)した件数は210件で、このうち検察庁に告発した件数は71.0%(告発率)にあたる149件だった。最近5年間の告発率はすべて70%台で推移している。つまり、査察の対象になると、7割以上が実刑判決を含む刑事罰の対象となるということだ。くれぐれも甘い考えを起こさないでいただきたい。

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