2010年06月17日-1
取消訴訟等を経ずとも国家賠償請求は可能~最高裁

 最高裁判所(宮川光治裁判長)はこのほど、評価誤りにより固定資産税を過大に課していた自治体を相手に国家賠償法に基づく損害賠償等を求めた事件の上告審で、固定資産税等の賦課決定に無効事由が認められない場合でも、その税額の過大な決定によって損害を被った納税者は国家賠償請求を行い得ると判示して原審判決を破棄、名古屋高裁に差戻しを命じる判決を言い渡した。

 この事件は、冷凍倉庫の固定資産税等を納付してきた納税者が、本来は税額が安く済む冷凍倉庫を、税額の高い一般倉庫として課税されたとして、固定資産税等の賦課決定の前提となる価格の決定に倉庫の評価の誤りという違法があり、評価誤りには過失が認められると主張。不服申立手続きを経ずに、名古屋市を相手に国家賠償法に基づく固定資産税等の過納金及び弁護士費用相当額の損害賠償等を求めて提訴していたもの。

 しかし、控訴審の名古屋高裁は、国家賠償法に基づいた損害賠償を認めることは、実質的に課税処分を取り消すことなく過納金の還付請求を認めるのと同一の効果を生じ、課税処分や登録価格の不服申立方法及び申立期間を制限してその早期確定を図る地方税法の趣旨から外れるとともに、課税処分の公定力の実質的な否定につながるため妥当ではないと判示してその主張を斥けたため、上告していた事案だ。

 これに対して最高裁は、たとえ固定資産の価格の決定及びこれに基づく固定資産税等の賦課決定に無効事由が認められない場合でも、公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したことによって損害を被った納税者は、地方税法が定める審査の申出及び取消訴訟等の手続きを経るまでもなく、国家賠償請求を行い得ると解釈した。

 さらに、本件倉庫は外観から冷凍倉庫と容易に確認し得ることから、市に過失が認められないということはないと指摘。その結果、控訴審の判断を是認することはできないとして破棄するとともに、市に過失があったかどうかや、あったとした場合の損害額などについてさらに審理を尽くさせるため、市側勝訴の控訴審に差し戻した。

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