2010年05月24日-2
消費税率引上げと経済効果を分析~財制審

 財政破綻に陥ったギリシャを上回る800兆円を超える財政赤字を抱えるわが国だが、その解決策を見出すべく、税制調査会をはじめ各機関で、その対策が検討されている。財政制度審議会の財政制度分科会が5月18日、財務省で開かれ、井堀利宏委員(東京大学教授)が分析した資料「財政健全化・消費税とマクロ経済活動」が提出された。消費税の税率引上げと経済への影響、増税のタイミング等を分析したものだ。

 同資料は、4つのケースに分けた増税の経済効果を示している。ケース1では、増税+無駄な歳出を増加させた場合で、負担の増加のみで民間消費、投資が抑制されるという最悪のケースとなる。ケース2は、増税+有益な歳出増で、負担の増加と歳出のメリットが相殺されるが、歳出が将来の生産増につながれば、成長にプラス(供給面)に働き、 貯蓄性向よりも歳出での投資性向が上回るとしている。

 一方、ケース3は、増税+減税(あるいは移転支出)を採用した場合、(1)所得効果:再分配効果(マクロの限界消費性向が増加→需要の増加:マクロの限界貯蓄性向が増加→供給の増加)、(2)代替効果:税制改革で相対価格が変更され、労働意欲刺激効果、投資意欲刺激効果がある。ケース4は、増税+財政赤字の削減で、現在の負担増で民間需要は抑制→「貯蓄過剰」といわれる我が国で、民間消費の抑制はどの程度起こるかが課題という。

 消費税と経済成長の観点からみた場合、 標準的なシミュレーション分析では、消費税は所得税と比較して成長にプラスになるとしている。また課税のタイミング効果(消費税で貯蓄が増加、消費は減少しない)もある。今後の消費税率引上げについて、 税収中立では無理、ネット増税(一部は財政赤字の縮減に)が必要で、将来の増税を回避できるプラスの効果を家計がどこまで評価するかにかかっている、としている。

 同資料の詳細は↓
 http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/siryou/zaiseia/zaiseia220518/01.pdf

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