2010年05月13日-1
消費税の調整資産を売却しても免税等の制限は継続

 国税庁はこのほど、2010年度税制改正において消費税法の一部が改正されたことに伴い、消費税法基本通達の一部改正を公表した。税制改正では、消費税に係る調整対象固定資産を取得して3年間は、免税事業者に戻ることや簡易課税を選択することができないことなど、消費税法が改正されたが、通達改正では、免税・簡易課税等の制限は、資産の売却の有無などに関係なく継続して適用されることを明記している。

 調整対象固定資産は棚卸資産以外の資産で税抜き100万円以上のものをいうが、当初の課税売上割合が以後3年間の通算課税売上割合と比べて著しく増減したときは、第3年度の課税期間において仕入税額控除の調整を行う必要がある。しかし、自動販売機等を用いた消費税の節税手法では、3年目に免税事業者あるいは簡易課税を選択することで調整対象からはずれ、1年目に受けた還付を丸々享受していた。

 そこで税制改正では、事業者免税点制度の適用を受けないこととした事業者のその選択の強制適用期間(2年間)、資本金1000万円以上の新設法人につき、事業者免税点制度を適用しないこととされる設立当初の期間(2年間)に、調整対象固定資産を取得した場合、その取得があった課税期間を含む3年間は、引き続き事業者免税点制度(簡易課税制度についても同様)を適用できない制限を設けることで、行き過ぎた節税を封じている。

 消費税法では、課税売上割合が著しく変動したときの調整は、調整対象固定資産を第3年度の課税期間の末日に保有している場合に限って行うこととされているが、通達改正では、この3年間課税事業者となる強制制度は、「各課税期間中に調整対象固定資産の仕入等を行った場合に適用されるのだから、その後にその調整対象固定資産を廃棄、売却等により処分したとしても、免税・簡易課税等の制限は継続して適用される」と明記している。

 なお、調整対象固定資産に関する消費税の仕入控除税額の調整は、課税売上割合が50%以上変動している場合に限られる。だから、通常の事業者であれば課税売上割合が著しく変動することは考えづらく、今回の改正の実務への影響は、免税・簡易課税等の制限のみとなる。つまり、本来なら還付されない建設に係る消費税を、敷地内に自動販売機を設置して販売手数料の課税売上を発生させて還付させる節税手法を防止する措置である。

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