2010年05月06日-2
高齢者対策から子育て支援に変える給付付き税額控除

 政府の経済財政諮問会議はこのほど、給付付き税額控除導入に向けての検討を決めた。民主党は昨年末、同政策の実現を明言しているが、同控除の狙いの一つは、政府の政策がいつも高齢者に偏っているのを、子育て経済支援に変えること。いわば垂直的公平に重きを置いた政策である。同制度の導入には共通番号制の導入が不可欠だが、世界各国で相次いで導入され、それなりの成果を上げている。

 英国では、一定時間就労を条件とした勤労税額控除(EITC)がある。25歳以上の人は、週30時間以上労働することが条件で、さらに、子どもの数に応じて、給付額を増加させていく。また、所得が増加するにつれて、給付額は少なくなり、最終的にはなくなる。つまり、勤労することを条件に給付する(勤労税額控除)、子どもの多い家庭への経済補助(児童税額控除)、中・低所得者を対象とする経済援助であるということになる。

 つまり、税制と社会保障制度を一体的に設計し運営することにより、低所得者や(低所得世帯の割合が多い)母子家庭を中心に支援し、勤労することの価値を高めようとするインセンティブ政策でもある。米国では、夫婦子ども2人で、勤労税額控除は年間所得が400万円を超える家庭まで受給資格がある。子女税額控除のほうは1400万円弱の世帯まで控除を行っており、高所得者も含まれ、子育てを助けるという点に重点が置いている。

 一方、カナダ及びシンガポールでは消費税逆進性対策税額控除が導入されている。消費税引上げによる逆進性の緩和策として、基礎的生活費の消費税率分を所得税額から控除・還付するもの。さらに、オランダでは低所得者層の税負担・社会保険税負担を緩和する措置として、社会保険料負担軽減税額控除を導入している。しかし、各控除とも正確な所得の捕捉を条件とすることに変わりはなく、番号制導入が絶対条件となろう。

ウィンドウを閉じる