2010年04月05日-1
居住の用に供していなくても特例適用可能なケースも

 小規模宅地等の相続税の特例について、相続人等による事業または居住の継続への配慮という制度趣旨等を踏まえ、2010年度改正において、相続人等が相続税の申告期限まで事業や居住を継続しない宅地等(改正前200平方メートルまで50%減額)が適用対象から除外された。しかし、「居住継続しない」ものでも、事情によっては「継続できなかった」ケースで、適用が認められるものもあるので、検討してみる価値がある。

 例えば、自治体との間で居住用土地建物について土地区画整理事業に基づく物件移転等保証契約を締結、その後の仮換地指定通知に伴い仮設住宅等使用願を提出して仮設住宅に転居、その後居住用建物は取り壊され土地は更地となったが、新居の完成を待たずに主人が亡くなってしまった。相続人である妻は、自治体からの仮換地の使用収益の開始日を通知してきたため、新居を建築するための工事請負契約を締結し、竣工・入居した。

 妻が相続した居住用宅地は、相続税の申告に当たって特定居住用宅地等の小規模宅地の特例が適用されるのかどうか。形式的には、相続開始の日に居住用建物の用に供しておらず、仮換地とともに申告期限にも居住の用に供していないので特例要件を満たしていないが、このケースでは自治体の施行する土地区画整理事業のために仮換地が指定され、かつ、使用収益が禁止されために住居も建築できない状態のまま死亡している。

 この場合、公共事業である土地区画整理事業における仮換地指定により土地の使用収益が禁止された結果、やむを得ずこうした事態になったもので、相続開始ないし相続税申告時点において、居住の用に供していない場合でも、租税特別措置法第69条の4(小規模宅地の特例)にいう「相続開始の直前において…居住の用に供されていた宅地」に該当(2007年1月23日最高裁判決)し、特例は認められる。

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