2010年02月04日-2
特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除の適用に注意

 2010年度税制改正大綱によると、特定居住用財産の純損失の繰越控除の適用期限が2011年12月31日まで2年間延長される。同制度は、住宅借入金の残高のある居住用財産を譲渡した場合の譲渡損失(住宅借入金の残高からその譲渡資産の譲渡対価の額を控除した残額を限度とする)について、譲渡の年に他の所得と損益通算をしても、なお控除しきれなかった金額について、翌年以降3年間の所得から繰越控除できるというもの。

 昨今のように地価の下落傾向が続いているなかでは、譲渡価額が取得費等を下回っているケースが多く、譲渡損失が生じることが多いが、ここで注意が必要なのが、譲渡価額と取得費等、住宅借入金の関係で、控除に3つの態様が出てくることだ。まず、取得費等と譲渡価額の差額である譲渡損失よりも住宅借入金残高のほうが少ない場合は、特例の適用がないということ。

 次に、譲渡損失の金額と譲渡価額の合計(取得費等)が住宅借入金の残高を上回っている場合は、取得費等と住宅借入金との差額については損益通算・繰越控除は適用されず、住宅借入金残高と譲渡価額の差額部分のみが損益通算・繰越控除の対象となる。譲渡価額5000万円、取得費等1億円、住宅借入金残高7000万円のケースでは、「7000万円-5000万円=2000万円」の部分のみが損益通算・繰越控除の対象となるわけだ。

 3番目は、譲渡損失の金額と譲渡価額の合計が住宅借入金の残高を下回る場合で、このときの譲渡損失は全額損益通算・繰越控除の対象となる。具体例で見ると、譲渡価額5000万円、取得費等1億円、住宅借入金残高1億1000万円のような住宅借入金残高が取得費等を上回るケースでは、「1億円-5000万円=5000万円」の譲渡損失全額が損益通算・繰越控除の対象になる。

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