2010年01月25日-2
法人契約における「1年以上の保険料前納」には要注意

 深刻な経済不況が続くなか、経費の節減を狙い、生命保険の見直しを図るケースも少なくない。決算前に、設備投資を控えるなどで発生した活用使途のない余裕資金のある社長から「今期は余裕資金があるから、加入している生命保険の保険料をこの際前納してしまいたい」というようなケースが見受けられる。しかし、前納したからといって、その事業年度内にすべてを損金処理できるわけではないので、注意が必要である。

 例えば、保険料が全額損金となる定期保険の保険料(年払)を10年分まとめて払ってしまった場合(9年分は前納)、当然ながら、支払った保険料をその事業年度ですべて損金計上することはできない。前納した保険料は資産計上することになるが、支払った保険料のうち1年分は必ず損金計上できると誤解している向きが少なくない。仮に、3月決算の会社が、3月に年払い保険料を10年分払ったとしても、1ヵ月分の保険料分しか損金に計上できないのだ。

 これは、そもそも年払保険料が「短期の前払費用」という特例扱いになっているからだ。法人税基本通達では、定期保険の保険料は「期間の経過に応じて損金の額に算入する」とする一方で、「短期の前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するもの)の額はその事業年度の損金の額に算入されない」と定めている。

 しかし、「法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日に属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める」と定めている。だから、当期分と前納保険料を同時に支払った場合には、この条件を満たさなくなるため、「短期の前払費用」の特例の適用ができなくなるわけだ。

 以上のように、たとえ年払保険料でも、次年度以降の分も併せて前納したときは、短期の前払費用に該当しなくなり、期間経過に応じた処理が必要となってくるので注意が必要だ。

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