2010年01月25日-1
本人が「知らなかった」贈与は「知った」時点で成立

 鳩山由紀夫首相の資金管理団体を巡る偽装献金問題は、2人の元秘書が起訴、略式起訴された。これを受けて鳩山首相は、謝罪する一方で、実母からの資金提供や偽装の事実を「まったく知らなかった」として、速やかに贈与税を納税する意向だ。資金提供を受けた額は毎月1500万円、年間1億8000万円、2008年までの7年間で総額12億円にのぼるという。今後は課税当局の対応が注目されるところだ。

 実務家は、贈与税を免れた額は巨額だが、真偽はともかく「知らなかった」のであれば、意図的な脱税とはいえないので重課の対象とはならないとの見方だ。ただ、新聞報道などにあるように、2002年、2003年分はすでに時効が成立しているので、課税当局が今回、贈与と認定した場合、課税対象は2004年以降の5年間分となり、2002年、2003年分の贈与税は免れることになる、との見方には疑問を呈している。

 それは、贈与契約は民法上、贈与者が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方がそれを受諾することによって効力を生じるとされているからだ。したがって、鳩山首相の実母がその都度贈与する意思決定をしていたとしても、首相がそれを承諾していない(「知らなかった」)場合には、贈与契約は成立していないことになる。鳩山首相のケースでは、贈与契約が成立したのは「それを知った(承諾した)」昨年12月となる。

 つまり、鳩山首相は昨年12月時点で贈与を承諾したことになり、「贈与契約が成立した」と考えるべきなのだから、除斥期間はなく、2002年、2003年分も課税対象に含めるべきだというのが、実務家の見方である。実母からの12億円にのぼる資金提供を「まったく知らなかった」の一点張りで通そうとする鳩山首相にはあきれるが、せめて納めるべき贈与税はすべて納めて欲しいものだ。課税当局の対応が注目される所以である。

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