9月から酒類販売への新規参入が完全自由化されることになった。今国会は今月18日に閉会となったが、政府・与党が酒販店の新規出店を8月末まで制限していた逆特区法の期限を延長する法案を提出しなかったため、同法は期限切れとなる。同法は、小売酒販店を保護する「緊急調整地域」として全国市区町村の4割弱の1274地域を指定し、酒類小売業免許の新規付与や他の地域からの酒販店の移転を8月まで禁止していた。
酒類販売は税務署の免許が必要だが、酒販免許の付与要件については、規制緩和のなかで2003年9月に人口基準による規制が撤廃され、原則的には自由化された。しかし、急激な経営環境の変化から零細業者が多い小売酒販店を守るため、議員立法による緊急措置法によって、2005年7月から一定要件を満たす「緊急調整地域」を指定し、同地域内での酒類販売参入を規制していた。
その指定要件は、1)新規に免許の付与が行われており、前年度のその地域における一酒類小売販売場あたりの平均小売販売数量が、その前3年間の平均値に比べ10%以上減少していること、2)前年度の小売販売数量が、上記割合で減少している酒類小売販売場の占める割合が2分の1を超えていることなど。つまり、酒の供給過剰地域で過当競争にさらされ売上が減少している小売酒販店が多い地域といえる。
この「緊急調整地域」は、規制緩和という時代の流れに逆行することから“逆特区”と呼ばれているが、小売酒販業界は、今回、保護していた法律が期限切れとなることで、スーパー・コンビニ等の新たな酒類販売参入などの脅威にさらされる。規制緩和とはいえ、もともと小売店は量販店を中心とした廉価販売による価格競争などで厳しい経営環境にあった。小売酒販業界の生き残りをかけた戦いは熾烈となりそうだ。