2012年05月21日-4
中小企業の海外直接投資件数は近年大きく増加

 日本政策金融公庫総合研究所が17日に発表した「中小企業の海外進出に関する調査」結果(有効回答数4607社)によると、現地法人の設立や既存の外国企業への出資(いずれも出資比率10%以上)など海外直接投資をしている企業の割合は全体の7.0%となった。業種別にみると、製造業で11.3%、非製造業で3.5%。そのほかの中小企業の海外展開の形態は、「直接海外から輸入」(13.0%)、「間接的に輸出」(11.5%)などがある。

 海外直接投資の拠点数の推移をみると、1990年代以降増加傾向にあり、2011年の進出数は前年の30件から54件と大きく伸びて過去最多となった。2011年までの累計では製造業が324件、非製造業が110件の計434件にのぼる。地域別にみると、「アジア」(385件)が最多、「北米」(28件)、「その他」(15件)、「欧州」(6件)の順。アジアのなかでは「中国」が218件と最も多く、アジア全体の56.6%を占めている。

 海外直接投資を実施した理由(拠点ごとに2つまで回答)では、2011年は「進出先の需要が旺盛、あるいは今後の需要の拡大が見込めるから」(49.2%)が最多、次いで「進出先の労働コストが安いから」(16.4%)、「進出先の原材料・部品などの調達コストが安いから」(13.1%)、「取引先や販売先が進出したから」(11.5%)がほぼ同数で続く。「進出先の需要が旺盛…」は、最近数年で大きく増加する傾向にある。

 海外直接投資を実施したことによる国内拠点への影響をみると、海外直接投資実施から5年後に国内拠点の売上が「増加した」と回答した企業割合は39.9%となり、「減少した」(11.7%)を大きく上回った。同じく国内企業の従業員数が「増加した」企業が29.4%、「変わらない」企業は54.9%と、合わせて84.3%の企業が国内の雇用を減らしていない。売上高対経常利益率も「上昇した」31.5%、「変わらない」54.8%となっている。

 海外直接投資先での問題点(拠点ごとに3つまで回答)をみると、製造業では「外国人従業員の教育や労務管理が難しい」(37.0%)や「現地での経営管理者の不足」(28.9%)など人的資源に関する問題点が多く、非製造業では「現地の規制や会計制度への対応が難しい」(34.5%)が最多だった。「問題点はない」とした企業は製造業で6.2%、非製造業で8.2%にとどまり、中小企業の海外投資には解決すべき課題が多いことが分かる。

 同調査結果の詳細は↓
 http://www.jfc.go.jp/common/pdf/tokubetu_120517.pdf

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