2012年05月02日-2
11年度不適切な会計・経理開示の上場企業は32社

 東京商工リサーチがこのほど発表した「2007年度から2011年度の5年間に『不適切な会計・経理』を開示した上場企業調査」によると、2011年度に「不適切な会計・経理」により財務に影響があったことを開示した上場企業は32社だった。2010年度より8社増加し、過去5年間では最多だった。同調査は、自社開示、金融庁、東京証券取引所などの公表資料を基礎に、不適切・不正などの会計・経理処理した上場企業を対象に集計したもの。

 不適切な会計・経理処理は、2011年度はオリンパスや大王製紙など世間の耳目を集めた企業が開示したが、特に10月以降に不適切な会計・経理処理を開示した企業は23社にのぼり、年度後半に集中した。2011年度はコンプライアンス(法令遵守)の意識が一段と高まり、財務や会計をより厳格に見直す動きが強まったことも開示増加の背景にあるとみられている。

 2011年度の不適切な会計の内容では、「その他」が15社で最多だった。「売上目標達成のため」とした内容が多く、「損失計上先送り」や「減価過少計上」など多様化している。次いで「子会社によるもの」5社、「循環取引」4社、「売上の前倒し計上」4社と続く。特に、2009、2010年度になかった「売上前倒しの計上」が急増。厳しい経営環境のもとで売上低迷を糊塗するために前倒しで計上する不適切な行為が増えた。

 発生当事者別では、「会社」が10社で最多、次いで「役員」9社、「従業員」7社、「子会社・会計会社」6社の順。「会社」が前年より5社増えたほか、「役員」が当事者となったケースも4社増と目立った。代表取締役自らが不適切な会計に関与してしまったケースも6社発生。競合激化や単価下落など経営環境が厳しく採算性が悪化しているため、経営者トップにまでプレッシャーが及んでいることがうかがえる。

 一方で、横領や着服のケースもみられ、モラルが問われている。5年間の累計では、「会社」が42社と最も多く、「子会社・関係会社」の34社、「従業員」の31社と続く。また、2011年度の産業別では、「サービス業他」が12社で最も多く、次いで「製造業」、「卸売業」の各6社、「建設業」3社と続く。卸売業は「売上水増し」などで前年の3倍に増加した。5年間の累計では、最多が「サービス業他」の32社、次いで「製造業」30社など。

 同調査結果は↓
 http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/2012/1218877_2004.html

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