2012年01月10日-2
11年呉服小売市場、厳しい状況続くも明るい兆しも

 矢野経済研究所が昨年10月~12月に実施した「呉服市場に関する調査」結果によると、2010年の呉服小売市場規模は、前年比9.4%減の3100億円と推計している。同市場は、1981年のピーク時に約1.8兆円あったが、2006年の呉服催事販売大手企業の倒産と過量販売の社会問題化を契機に縮小傾向にある。催事販売の縮小以降、大手専門チェーンは店頭での新規顧客の獲得に注力し、既存店舗の見直しなどを図ってきた。

 さらに、既存顧客への付加サービスを充実させたことなどが功を奏し、厳しい状況が続くなかでも、明るい兆しもみえている。また、近年大手専門チェーン各社は、若年層を対象とした新業態の開発に取り組んできているが、こうした店舗で取り扱うのは安い和雑貨やプレタきもの(仕立てあがっている合繊繊維のきもの)やリサイクルきものなどであり、客単価が低く、収益に見合った客数が確保できないなどの課題が残っている。

 販売チャネル別にみると、「直販・インターネット販売」、「その他」の伸長率が目立つ。「その他」には主に着付け教室での販売が含まれているが、近年の呉服業界では、着付けをきっかけにしてきものの販売を行う業態の伸びがよく、メーカーや問屋が市場参入するなど注目を集めている。初心者も着付け教室をきっかけとして自身できものを“着られる”“着こなせる”ようになることで着用機会が拡大し、購買意欲が刺激される。

 こうした流れは、これまで成人式や結婚式など“ハレ”の場での需要が中心となっていた呉服市場に、よりパーソナルでカジュアルなきものという新たな需要を生む可能性がある。景気悪化による消費不況など依然として厳しい状況にあるものの、上記のような状況を勘案し、下げ幅は鈍化傾向とみている。こうしたことから、2011年の呉服小売市場規模は、前年比7.1%減の2880億円と見込んでいる。

 同調査結果の概要は↓
 http://www.yano.co.jp/press/pdf/893.pdf

ウィンドウを閉じる