2010年12月20日-4
2009年度名目労働生産性760万円と15年前の水準に

 日本生産性本部がこのほど発表した「生産性白書2010年版」によると、2009年度の日本の名目労働生産性は760万円となり、15年前(1994年度、758万円)とほぼ同水準まで低下したことになる。実質労働生産性上昇率は-0.3%と2年連続のマイナスとなった。同白書は、各種統計データを用いた2009年度の労働生産性の動向や上場企業を対象としたアンケート調査結果、生産性からみた日本の課題を収録したもの。

 実質労働生産性上昇率はマイナスになったが、2009年第2四半期(4~6月期)から回復に転じたとみられる。ただ、2009年度を通じて生産性の上昇と低下を交互に繰り返しながら回復に向かう状態にあり、やや不安定な局面にある。2008年から2009年はじめにかけての労働生産性の落込みは、GDP(実質ベース)に比べると小幅にとどまったものの、以降の回復プロセスではGDPよりばらつきが大きく、方向感があまり定まっていない。

 産業別の労働生産性の動向をみると、対象18産業のうち13の産業分野で労働生産性上昇率(対前年度比)がマイナスとなったが、全産業分野でマイナスだった2008年度と比較すると、「サービス業」(+3.0%)や「情報通信」(+2.5%)、「小売」(+2.2%)などでプラスに転じた。このほか、「不動産業」(+0.4%)や「飲食店」(-1.0%)など11分野でも労働生産性上昇率が2008年度を上回り、半数以上の産業分野で改善基調へと転換した。

 2009年度の製造業の労働生産性トップは、前年度に続き「任天堂」(2億1441万円)。名目労働生産性水準が4割近く低下したが、これは、市場の冷え込みなどによる主力のゲーム機やソフトの販売の減速に加え、ゲーム機などの爆発的ヒットに支えられた2008年度の反動や円高も付加価値を圧縮する要因となった。上位では、「武田薬品工業」(5062万円/第4位)や「久光製薬」(3596万円/第15位)といった医薬品メーカーが順位を上げた。

 同白書は、「日本経済の活性化・生産性向上のためには、企業の活発な参入・退出による新陳代謝と人的資本、組織資本などの無形資産の蓄積が必要」と指摘。人的資本の観点からは、将来の産業構造変化を見据え、企業活動のグローバル化に対応した人材育成を粘り強く行っていくことが求められるとして、(1)新卒一括採用の見直し、(2)海外人材の幹部職への登用を含む多様な人材の活用を進めるべき、との考えを示した。

 同白書の概要は↓
 http://activity.jpc-net.jp/detail/01.data/activity001011/attached.pdf

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