2010年08月30日-3
食品産業の農業算入割合が初の減少~日本公庫

 日本政策金融公庫が実施した「2010年上半期食品産業動向調査」結果(有効回答数2568社)によると、食品産業(製造業、卸売業、小売業、飲食店)からの農業参入割合は、これまで参入拡大の傾向にあった過去の調査結果に比べ、今回初めて1.1ポイントの減少となったことが明らかになった。減少に転じたのは2007年の調査開始以来、初めてのこと。「採算性や収益性の判断」を理由に挙げている。

 過去3回の調査では、農業に「参入している」と回答した企業割合が、それぞれ7.7%(07年上半期)、8.6%(09年上半期)、10.5%(09年下半期)と拡大してきたが、今回の調査では9.4%と1.1ポイント減少した。また、「検討・計画している」、「関心はある」と回答した参入予備軍ともいえる企業の割合は、前回調査と同じ33.4%と変化はなかった一方、「参入を断念または撤退した」が0.9ポイント増の2.6%となった。

 「参入している」(9.4%)、「検討・計画している」(5.5%)と回答した企業のうち、農業参入に必要な支援・課題(複数回答)については、「採算性、収益性の判断」と答えた企業の割合が45.3%ともっとも多く、次いで「事業地(農地)の確保」(38.4%)、「資金調達の確保」(37.8%)と続いた。食品産業など異業種企業からの農業参入の促進には、採算性・収益性の判断などを含めた初期の財政的な支援が大きなポイントとなってきている。

 また、農業への参入理由(2つまで回答)では、「商品の高付加価値・差別化」が41.7%と最多、「原材料の安定的な確保」(35.2%)と経営的メリットが大きいと判断している。一方で、「原材料の調達コストの低減」(16.5%)よりも「トレーサビリティーの確保」(27.1%)や農地の保全など「地域・社会への貢献」(23.6%)を重視している点は、食や企業に対する安全・安心といった消費者マインドを強く意識していることがうかがえる。

 農業参入の方法、形態(複数回答)については、「自社・子会社が直接参入」とする企業割合が53.8%と最多、次の「農業法人を新たに設立」(25.5%)、「農業法人に出資、業務提携」(22.4%)と比べて2倍以上の割合となっており、昨年12月に施行された改正農地法により、農業生産法人以外の一般企業にも農地の貸借が可能となったことが異業種からの農業参入の方法、形態に反映してきている結果となっている。

 同調査結果の概要は↓
 http://www.afc.jfc.go.jp/topics/pdf/topics_100825_1.pdf

ウィンドウを閉じる