2010年06月23日-2
返済猶予後倒産、09年1月以降で累計100件判明

 2009年12月に金融円滑化法が施行され、金融機関は貸付条件変更に極力応じるという努力義務が課された。金融庁が発表した同法に基づく中小企業向け融資返済条件の緩和実績は、3月末時点で35万4463件にのぼり、拒否率も1%台と低水準にとどまった。これらの金融支援策が功を奏して、企業倒産は2009年9月以降9ヵ月連続で前年を下回っている。企業にとって、返済猶予によって資金繰りに一息ついたことは確かだ。

 しかし、企業にとって、返済猶予によって全ての問題が解決するわけではない。リスケ期間中に本業の業績をどれだけ改善できるかが重要であり、“返済猶予後”に業績不振から倒産に至るケースも散発している。帝国データバンクが実施した「返済猶予(リスケ)後倒産の動向調査」結果によると、返済猶予後に倒産に至ったケースは、2009年1月から2010年5月までで100件判明したことが分かった。

 一ケタ台での推移が続いていた月別件数は、4月には17件と多発、5月も8件発生するなど、増加傾向を強めている。今年に入って5月までの累計は42件となり、前年同期(25件)と比べ68.0%の大幅増加となった。一方、負債総額は3559億7300万円に達した。2009年2月の796億5000万円をピークに減少傾向が続いていたが、上場不動産2社が倒産した2010年5月は785億7200万円に急増し、2番目の高水準となった。

 返済猶予後に倒産した100件を業種別にみると、「製造業」が31件でトップ、「建設業」(24件)、「卸売業」(14件)が続いた。倒産原因別では、販売不振などの「不況型倒産」が81件と大半を占めた。負債規模別では、負債「1億円以上5億円未満」が45件で最多。負債100億円以上が5件発生した一方、負債5000万円未満は3件にとどまった。地域別では、「関東」が74件でトップ、「近畿」(26件)、「中部」(11件)が続いた。

 以上のように、返済猶予により一時的に倒産を回避している企業は多いと推測されるが、返済猶予期間中に本業の業績が回復しなければ、問題の先送りに過ぎない。返済猶予の期間は通常6ヵ月といわれており、今後の金融機関の再リスケ対応如何ではあるが、6月以降は返済が再開される可能性もあるため、帝国データバンクでは、「今後はリスケ後倒産の増加とともに、倒産件数自体の反動増にも注意する必要がある」とみている。

 同動向調査結果の詳細は↓
 http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p100602.pdf

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