2010年06月14日-3
労働者派遣業の倒産が増加傾向、8割が負債小規模

 厚生労働省発表の2009年度労働者派遣事業報告(速報)によると、派遣労働者総数は前年度比42.4%減の約230万人と大幅に減少し、5年ぶりに前年度を下回った。こうした状況を反映して労働者派遣業の倒産が増加している。東京商工リサーチのまとめによると、労働者派遣業の倒産は、前年の2009年が過去最多の95件にのぼった。その後も増勢が続き、今年は5月集計時点で、前年同期比8.8%増の37件となった。

 今後の状況によっては前年を上回る可能性がある。これに対して負債総額は、前年同期比43.0%減の25億600万円だった。負債額別では、「1億円未満」が同26.0%増の29件と全体の約8割を占め、負債が小規模な企業が目立つ。また、形態別では、企業の解体・消滅である「破産」が同34.6%増の35件と、全体の94.5%を占めた。これに対して再生型(会社更生法、民事再生法)は発生がなく、厳しい経営状況を反映した。

 日本人材派遣協会がまとめた「労働者派遣事業統計調査の報告」(2010年1~3月)によると、派遣スタッフ実稼動者数は、全地域で前年同期比減少となった。減少幅は狭まってきたものの、2008年10月から続く減少傾向に歯止めがかかっていない。業種別では、SE・プログラマーなどの「情報処理システム開発関係」などの減少が目立つという。世界同時不況の影響による企業業績の悪化から派遣社員採用が抑制されている。

 これに伴い、労働者派遣業者の倒産も一気に増加。さらに労働者派遣業界は、これまで規制緩和で市場規模を拡大してきたが、最近は規制強化へと経営環境が様変わりした。仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ登録型派遣(秘書や通訳など専門性の高い26業務を除く)や製造業派遣を原則禁止とする労働者派遣法改正案の国会成立をにらみ、企業側の採用の手控えや絞込みがみられるため、労働者派遣市場は、厳しい状況が続くと予想される。

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