2010年06月10日-3
「改正貸金業法」完全施行後の中小企業への影響は?

 今月18日、改正貸金業法が完全施行される。同法では過剰貸付に対する総量規制が導入され、借入残高が年収の3分の1を超える場合、貸金業者から新たな借入ができなくなる。これが、中小企業の資金調達が困難になり、企業倒産の増加やヤミ金融の伸張につながるとの懸念につながっている。そこで、改正貸金業法の完全施行後の中小企業への影響について分析したのは東京商工リサーチのレポートである。

 同レポートによると、今回の総量規制の対象は「個人向け貸付」のみで、個人事業者への貸付や、手形割引による資金調達は原則可能になっている。こうした「個人向け」と「事業者向け」の情報が混在している背景には、総量規制の「除外」や「例外」事項など法改正の内容の周知徹底の遅れがある。ヤミ金融の勢力拡大は論外だが、改正の中味を冷静に受け止めた対応が必要と指摘している。

 一方、上場貸金業者9社(消費者向け金融5社、事業者向け金融4社)合計の業績推移では、営業収益のベースになる最近10年間の貸付残高は、2003年の約6兆3400億円をピークに、2010年は約3兆1700億円に半減している。また、改正貸金業法の全面施行を前に、消費者向け大手貸金業者は無担保ローンの新規制約率が30%前後に低下し、前倒しで審査厳格化に取り組んでいる。

 中小企業の倒産は、景気や金融機関の貸出姿勢、さらに企業の自律的な業績回復が絡み合う。それだけに資金調達は大きなインパクトを持つ。貸金業界の市場が縮小するなか、借り手の企業側も資金調達の手法を多様化し、資金繰り環境は以前よりも整備されている。このため、業績不振や信用低下に陥った企業で、個人借入を運転資金に充当している場合、改正貸金業法の完全施行は、一時的に影響が出る可能性があるとみている。

 しかし、大局的な観点では、保証や貸付などの直接ファイナンスは対象外のため、改正貸金業法を直接の契機にして企業倒産を押し上げる要因は乏しいと、レポートは分析している。

 同レポートの全文は↓
 http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/2010/1202677_1612.html

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