2010年04月12日-2
取引先の与信管理のポイント~登記簿の活用

 売上を増やすことは商売の基本だが、代金の回収がうまくいかなければ事業の継続はおぼつかない。与信管理の目的は、売上を増加させながら不良債権発生による損失を最小限にとどめることにある。日本政策金融公庫がこのほど発表したレポート(経営Q&A)「取引先の与信管理のポイント」は、取引先の与信管理の基本、具体的な情報収集の方法や着目すべきポイントを解説しているが、そのなかで登記簿の活用を勧めている。

 それによると、与信管理では、日ごろから取引先の情報を積極的に収集する必要がある。取引先の定性情報のなかでもひときわ重要なのが、商業登記簿と不動産登記簿だ。まず、商業登記簿には、「現在事項証明書」、「履歴事項証明書」、「閉鎖事項証明書」などがある。与信管理で使用するのは、「履歴事項証明書」と「閉鎖事項証明書」だ。「現在事項証明書」では現在効力を有する事項の確認しかできず、過去の情報がわからないからだ。

 商業登記簿で確認すべきポイントは、(1)社名や本店所在地の頻繁な変更はないか、(2)登記簿の目的欄の記載は取引先の事業内容と合致しているか、(3)資本金はいくらか、(4)役員の構成におかしな点はないか、の4点。例えば(1)では、過去の不祥事や約束手形の不渡り記録を隠すために、社名を変更するケースがあるので、意味のない変更や頻繁な変更がないかを確認する。本店所在地の変更も同様だ。

 次に、不動産登記簿には「現在事項証明書」と「全部事項証明書」があるが、与信管理で使用するのは履歴の分かる「全部事項証明書」だ。不動産登記簿は「表題部」と「権利部」に分かれ、権利部は「甲区」と「乙区」に分かれている。与信管理で大切なのは「権利部」だ。「甲区」には、所有権に関する事項が記載されている。ここでは、登記上の「所有者」を確認することが必要となる。

 それは、自社ビルだと聞いていても、取引先の代表者が個人で所有していたり、関連会社の不動産管理会社の名義になっていたりすることがよくあり、まったくの第三者の名義になっていた場合には、取引先との関係を調べる必要があるからだ。また、「乙区」には所有権以外の権利、主に「抵当権」が記載されている。抵当権が設定されている場合には、抵当権者が誰かを確認するようにするわけだ。

 同レポートの全文は↓
 http://www.k.jfc.go.jp/pfcj/pdf/yoshinkanri01.pdf

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