2010年02月12日-3
企業の賃金改善、「ない(見込み)」が約4割

 リーマン・ショック後の世界同時不況が日本経済において雇用・所得不安をもたらしているなか、雇用確保とともにベースアップや賞与(一時金)の引上げなど賃金改善の動向が注目されている。帝国データバンクが1月下旬に実施した「2010年度の賃金動向に関する企業の意識調査」結果(有効回答数1万651社)によると、2010年度に正社員の賃金改善が「ない(見込み)」と回答した企業が40.5%と約4割を占めた。

 前年調査に比べ「ない」とする企業は1.5ポイント下回っているが、非常に厳しい賃金動向が続くと見込まれている。一方、「ある(見込み)」と回答した企業は31.8%となり、同3.9ポイント上回った。賃金改善の具体的内容は、「ベースアップ」が27.2%、「賞与(一時金)」が16.6%。また、2010年度はすでに10.5%の企業で「賃金の引下げ」を予定しており、定昇の凍結や賞与(一時金)カットなどもやむを得ない状況が続いている。

 賃金改善をする理由(複数回答)については、「労働力の定着・確保」が52.7%でもっとも多かったが、前年調査からは5.8ポイント低下し、労働市場の需給が大幅に緩和した前年以上に、需給緩和の流れが反映される結果となった。次いで「自社の業績拡大」(40.9%)が多く、同6.4ポイント上昇。以下、「同業他社の賃金動向」(12.2%)、「物価動向」(5.3%)、「団塊世代の退職による人件費・労務費の減少」(5.2%)などが続いている。

 一方、賃金改善がない理由(複数回答)では、「自社の業績低迷」が78.1%と8割近くに達し、前年調査から1.3ポイント増加。次いで「同業他社の賃金動向」が18.1%、さらに「物価動向」が15.2%で同4.5ポイント増加し、デフレ状況を反映した賃金改善の抑制要因となった。以下、「内部留保の増強」(11.0%)や「人的投資の増強」(7.0%)など、賃金水準を抑制して他の目的に振り分ける姿勢が続いた。

 なお、2010年度の労働条件に関する方針決定における最大の焦点については、37.4%の企業が「雇用」と回答し、雇用を最優先する企業が最多となった。次いで「賃金及び雇用」が33.2%となり、急激な雇用環境の悪化を受けて「賃金より雇用を重視」として労働条件の方針を決める企業が多いなか、賃金と雇用の両方を重視する企業も3社に1社となった。一方、「賃金」と回答した企業は11.6%と1割程度だった。

 同意識調査結果の詳細は↓
 http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/keiki_w1001.pdf

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