2010年02月12日-1
内需拡大狙い、中国が各地で最低賃金を引上げ

 独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)のレポートによると、経済成長の著しい中国(中華人民共和国)各地の当局が最低賃金基準の引上げを相次いで表明している。2008年10月以降、リーマン・ショックによる金融危機の影響で、2009年はほぼ全国で凍結されたものの、当局は景気回復を受けて賃金水準を底上げし、労働者の不満抑制と内需拡大を狙っているという。

 これが実現すると、中国に進出している日系企業も対応を迫られそうだ。中国メディアによると、2009年の域内総生産(GDP)が全国平均を上回る12.4%増となった江蘇省は、最低賃金を今月から12%以上引き上げると発表。同省の主要都市の最低賃金は月給960元(約1万2800円)となり、現在の上海市とほぼ同じ水準に向上する。同省には約6000社の日系企業が進出しており、「コスト増につながる」と懸念する声も出ている。

 欧米向けの玩具や靴などの工場が金融危機で相次ぎ閉鎖、大量の失業者が出た広東省東莞市も引き上げを表明。同市は、景気の好転で生産が回復、人手不足に陥っており、他地域へ労働力が流出するのを食い止める狙いもあるという。こうした動きを受け、上海市は最低賃金の15%引上げを発表し、北京市も10%前後の増を検討。浙江省や重慶市なども引上げを表明しており、中国全土で賃金水準が上昇する見込みだ。

 昨年の民主党政権誕生で、同党のマニュフェストで「最低賃金(時給1000円)」が打ち出されているわが国では、その実現に苦慮している中小企業が多い。中国においても、金融危機直後は広東省などで待遇への不満から労働争議や暴動が頻発したという。しかし、経済紙、第一財経日報は「国際基準に照らして中国の最低賃金は依然として低い」と指摘しているが、日本企業もコスト増に苦慮することになりそうだ。

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