2010年01月25日-4
日本総研、貧困線近辺の所得層の国保料負担で提言

 日本総研はこのほど、「貧困線近辺の所得層の国民健康保険料負担―試算と提言―」と題したレポートを公表した。それによると、厚生労働省試算の相対的貧困率における貧困線114万円を、留意点はあるものの、暫定的にナショナルミニマムと仮定して、貧困線近辺の所得層(1人~4人の4世帯類型)の国保保険料を1804の市町村ごとに試算した上で、「低所得層の保険料負担への上限設定」や「給付付き税額控除の活用」を提言している。

 低所得層の保険料負担への上限設定では、例えば、収入133.9万円の1人世帯の国保保険料上限は10万円といったように予め上限を定めておくことにより、ナショナルミニマムが確保されやすくなると同時に、保険料の市町村間及び協会けんぽとの極端な格差は回避される。また、「給付付き税額控除の活用」では、国保自体には手を付けず、個人所得課税において給付付き税額控除を導入し、それを通じてナショナルミニマムの確保を図る、としている。

 国保保険料を現行の所得控除ではなく、給付付き税額控除に切り替える個人所得課税改革を行うことで、「第一に、社会保険料の特徴の一つである負担と給付の対応関係を損なわず、税による再配分を通じてナショナルミニマムを保障するという社会保険料と税の本来的な役割に則った仕組みになり、第二に、前政権で政策課題として掲げられた国民年金保険料軽減や今後税率引上げが必至な消費税の逆進性対策となる」としている。

 しかし、これを公平性を確保しつつ実現するには、正確な所得捕捉など執行面における環境整備不可欠となると指摘。「この点に関し、民主党は歳入庁設置、税・社会保障共通の番号導入などを掲げており、ナショナルミニマムの議論に合わせ、これらの具体化も急がれる」と提言を結んでいる。いずれにしても、格差社会の拡大の下、社会保険料負担の問題は避けては通れない課題といえる。

 同レポートの全文は↓
 http://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/pdf/company/release/2010/100108/jri_100108.pdf

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