2010年01月14日-2
取引先のリスケ申請で与信を引き締める企業が約4割

 中小企業向け融資の返済を猶予する「中小企業金融円滑化法」(返済猶予法)は昨年12月4日から施行されている。帝国データバンクが実施した「返済猶予法施行後の企業の意識調査」結果(有効回答数1万359社)によると、返済猶予法施行後のリスケジュール(リスケ)申請環境の変化は、リスケ申請がしやすくなるなど環境が「良くなった」と回答した企業の割合は7.7%にとどまった。

 リスケ申請の環境が「悪くなった」も7.7%で、「良くなった」と同水準。その他、「大きな変化はない」が47.4%、「分からない」が37.1%だった。また、現在、実際にリスケを検討している企業は6.5%だった。一方、金融機関へのリスケ浸透での企業間の支払面への影響は、「良い影響は期待できない」が35.1%であるのに対し、「期待できる」は20.3%となり、社会全体でみても少なからぬ効果があることが示唆されている。

 返済猶予法施行後、仮に自社の取引先のなかで金融機関に対してリスケ申請が了承された企業があった場合のその取引先に対する与信管理姿勢の変化は、「与信を引き締める(与信枠、取引限度額を縮小する)」と回答した企業が40.3%で最多となった。一方、「変わらない」は29.6%と3割近くは与信管理姿勢に変化はないと回答。「与信を緩和する(与信枠、取引限度額を拡大する)」はわずか0.6%にとどまる。

 「与信を引き締める」と回答した企業のその理由(複数回答)は、「リスケ申請した時点で資金繰りはひっ迫していると考えるため」との回答が82.5%ともっとも多く、次いで「猶予の効果は一時的と考えるため」が50.2%だった。他方、「与信を緩和する」とした企業では、「猶予の間にその企業の業況回復が期待できる」が67.2%、「政府の金融機関への支援要請の徹底に期待する」が50.2%だった。

 このように、返済猶予法の施行により、企業間の支払いに良い影響が期待できるとする企業が2割に達する一方で、実際に自社の取引先がリスケ申請を行うと4割以上の企業が与信を引き締めるという厳しい対応を取るとしている。その背景として、需要回復には長期間必要と考えている企業が多く(74.5%の企業が需要の本格回復は2011年以降と回答)、日本経済全体として景気を改善させていくことの重要性が一段と増している。

 同意識調査結果の詳細は↓
 http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/keiki_w0912.pdf

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