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第6回 「収益の通則・・・有価証券の譲渡損益」税理士 中川 祐一 | ||||||
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法人の所得金額は、益金から損金を控除して求めます。有価証券の譲渡利益は益金、譲渡損失は損金に算入されることになります。
譲渡原価=一単位当たりの帳簿価額×譲渡した数 ここで問題になるのは、「一単位当たりの帳簿価額」の計算です。たとえば、A社の株式を1株100円、150円でそれぞれ1,000株ずつ購入していたとします。この株を1,000株譲渡した場合に、その原価(単価)は、100円、150円のどちらにすればいいのでしょうか。 この点については一定のルールが必要です。法人税法では、「移動平均法」又は「総平均法」のいずれかを選定し、その選定した方法により一単位当たりの帳簿価額(譲渡原価)を計算することとしています。
事業年度4月1日から3月31日
移動平均法とは、銘柄を同じくする有価証券を取得する都度次の算式で平均単価を算出し、一単位当たりの帳簿価額とする方法をいいます。 (算式) 取得する直前の有価証券の帳簿価額+新たに取得した有価証券の取得価額 (事例の譲渡原価の計算) 事例のケースの譲渡原価は次のように計算されます。 220円×2,000株+160円×4,000株 = 180円 180円×5,000株=900,000円
総平均法とは、銘柄を同じくする有価証券について、次の算式で平均単価を算出し、一単位当たりの帳簿価額とする方法をいいます。 (算式)
[220円×2,000株]+[160円×4,000株]+[240円×3,000株] = 200円 200円×5,000株=1,000,000円
移動平均法は、同一銘柄の有価証券を取得する都度、平均単価を計算しなければならないため、売買回数が多い場合には計算が煩雑になります。しかし、譲渡時には一単位当たりの帳簿価額(譲渡原価)が計算されているため、譲渡の都度譲渡損益を確定することができます。 一方、総平均法は、平均単価の計算は期末に一度だけ行えばよいので計算は簡単ですが、期末にならないと譲渡原価が確定しないため、譲渡時には正確な譲渡損益の計算ができないことになります。
有価証券を新たに取得した場合には、移動平均法又は総平均法のいずれの方法で一単位当たりの帳簿価額を計算するのかを選定し、取得した事業年度の確定申告書の提出期限までに納税地の所轄税務署長に届け出ます。 この届出をしなかった場合には、移動平均法が適用されることになります。このことから、移動平均法が法定算出方法とされています。
一単位当たりの帳簿価額の算出方法を変更しようとする場合には、変更しようとする事業年度の開始前までに、変更の承認申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
有価証券に関する法人税の取り扱いは、平成12年度の税制改正で大きく変わりました。届出をしなかった場合の法定算出方法についても、改正前は総平均法だったものが、平成12年4月1日以後に開始する事業年度から移動平均法に変更されたのです。 改正前から保有していた有価証券については、改正後最初の事業年度(改正事業年度)において取得したものとして取り扱うこととされています。 したがって、従来から総平均法を採用している場合であっても、改正後に引き続き総平均法を採用するときは、改正事業年度の確定申告書の提出期限までに、算出方法の選定に関する届出をし直す必要があります。
契約日に損益計上する旨が定められたのは、やはり平成12年度の税制改正においてです。改正前は引渡し時に損益計上するのが一般的でした。 そこで、平成12年4月1日から平成14年3月31日までに開始する各事業年度においては、その間に譲渡したすべての有価証券について、引渡し日に損益を計上している場合には、従来どおり引渡基準による処理が認められることになっています。 有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算定方法は、‡@売買目的有価証券、‡A満期保有目的有価証券、‡Bその他の有価証券の区分ごと、かつ、株式・社債等の種類ごとに選定します。 ‡@~‡Bの有価証券の区分については今回は触れませんでしたが、この点は第11回「有価証券の評価」をご参照ください。 なお、上場有価証券について認められていた低価法は、平成12年度の税制改正で廃止になりましたので留意してください。 |
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