ゼイタックス |
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第9回 米国における税務行政 その4(税務調査について) | ||||||
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III 米国の税務調査についての公聴会(2) 4 公聴会におけるIRS長官代行の証言 しかし、公聴会における被害者の数々の証言には、ドーランも返す言葉がありませんでした。そこで彼は、公聴会で「証言された事例について、われわれの対応は、きわめて不適切だった、まことに申し訳ない」と陳謝し改革を約束しました。 5 ドーランの改革 ニューズ・ウィーク誌のスクープによれば、停職処分を受けた一人であるロナルド・ジェームス(アーカンソー州・オクラホマ州担当の地区責任者)の8月4日付の署名入りのメモには、IRSの内部では、押収、差し押さえ、課徴金取り立ての実績を基準に職員の勤務評定が行われていた実態が克明に記載されていました。 これは、明らかに納税者の権利擁護義務に対する違反であるということができます。そうして、職権乱用の原因は、地区責任者自体の格付けにあったことが明らかになりました。 公聴会を受けてドーランが、最初に行った改革は、徴税額を基準に全国33の地区責任者を格付けする慣行の廃止でした。格付けにより昇進が行われ、予算配分が行われるIRSの制度に対して、地区責任者の関心は高かったといえます。 すなわち、公聴会の証言によれば、競争心に駆られた地区責任者の出す報奨金が、職員の職権乱用の主な原因になっていたということができます。 6 米国議会における改革の方向 そこで、IRSの職員は、経済的な理由で法的な抵抗手段を取りにくい低所得に、行政召喚状の発行をにおわせながら徴税の効率化としての職権乱用を行っていたということができます。 そこで、米国議会は、公聴会の証言を踏まえ、すべての国民の生活に影響を与える広範かつ強大な裁量権を与えられているIRSに、常設の監視機関が存在しなかった事が、これらの腐敗の温床になったとして、IRS再改革に乗り出したということができます。 |
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