ゼイタックス |
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連載11 III 資金繰りに困らない強い財務体質づくり(5) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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6 業種別回転経営のポイント (1)業績の上がらない会社の共通症状 これは、「土地や建物などの固定資産は企業体力の証明」であるという経営者の誤った思い込みが、無理に借金をして利益に直結しない土地や建物を、貸借対照表に抱え込ませたものです。その結果、ぜい肉だらけの「不健康な肥満体」となって、収益を確保できる体力を自ら損ねているのです。 21世紀の経営で重要なことは、「いかに少ない資産で大きな利益を上げるか」、ということです。 (2)2回転以上の総資産回転率を目指す しかし、業種によって資産が過大かどうかの判断は一律に判断できないのも事実です。業種ごとに資産の持ち方に特性があり、同じ業種でも扱い商品や販売方法なども違ってくるからです。 たとえば、小売業では固定資産過大症になるのは、ある程度仕方がありません。その代り、棚卸資産や売掛金が基本的に少なくてすむ体質ですから、もしこれらの資産が増えてきたなら、直ちに治療しなければならない病気だと思わなければなりません。 建設業や卸売業は、本来は自前の本社屋や倉庫がなくても経営ができる業種ですが、いつのまにか土地や建物を持って固定資産を膨らませ、それが資金繰りを圧迫するケースが目につきます。それも自己資金でなく、銀行からの借入れであれば重症です。 自前の本社屋は、売却しないのならすぐに貸しビルにし、建物自体がカネを生むようにもっていくべきです。自前の建物だから家賃はいらないと考えて、ビルからは費用しか生まれない経営を続けることは墓穴を掘ることになります。 メーカーであれば、工場の土地や建物、機械設備などで固定資産が膨らみやすい体質をもっています。 そこを逆手にとって、製造をすべて外注に出し、原則的に工場を持たないメーカーとして高収益体質の会社を築いているところもあります。 それぞれの業種には、固有のかかりやすい症状があります。この症状を「固定資産過大症」、「棚卸資産過大症」、「売掛債権過大症」、「労働生産性低下症」、「粗利益率過小症」に分けて、マトリックスにまとめると表1のようになります。 表1 業種別症状の傾向
○ …… 業界の体質としてやむをえない症状 これらの症状は、いずれも自覚しにくいものだけに、いつのまにか慢性化してしまう危険があります。 少しでも症状に気づいたら、次の2点に留意するようにして下さい。 ‡@症状が慢性化しないように、症状別に原因を究明し、回転率向上を中心とした対策を考える (3)小売業・飲食業の回転経営 固定資産を積極的に持とうとしないこと 小売業には、もともと「固定資産過大症」という特性があります。新たに小売業なり飲食業なりを始めようとすれば、保証金や建物の内装などのイニシャルコストがかかります。固定資産をゼロに抑えることはできない業種です。しかし、だからといって安易に店舗や土地を自前で持とうという考えは危険です。 小売・飲食業では、店舗の立地がものをいいます。 ところが、やっかいなことに、立地条件は不変のものではありません。幹線道路が新しく開通する、新駅ができる、大規模都市開発が行われるなどで人の流れが変わります。有力なライバル会社が近くに進出してくることもあります。そんな時に、店舗や土地を所有していると身動きがとれません。所有していること自体が、とんでもないデメリットに一変する可能性があるのです。 次に押さえるべきポイントは、できるだけ在庫を持たないということです。小売業で在庫が多いというのは大きな問題です。飲食業では3日分、小売業でも10日分の在庫でやっていける仕組みをつくることです。在庫の回転率を高め、現金商売に徹することに商売のポイントがあるということをしっかり自覚して下さい。 売掛金にも注意が必要です。在庫が多くて、売掛金がたくさんあるような場合は、小売・飲食業でも高く売らないとやってはいけません。これからは、そのような高コストを負担してくれるお客様はほとんどいないと覚悟すべきです。売掛金は回収できないこともあるし、資金繰りをきつくする大きな要因となります。現金払いの居酒屋と、社用族のつけ払いでもっている高級クラブの違いを心得て下さい。 ‡A 資金のむだ遣いをしない 繁盛している飲食店の余裕資金に目をつけるのが銀行です。土地を買いませんか、店舗を買いませんか、融資しますよ、と話をもちかけられます。ただでさえ借店舗の保証金や敷金で固定資産が増えやすい体質なのに、借金をして土地や建物を所有するとどうなるでしょうか。そんなときに限って、近くに強力なライバル店ができ、売上が急降下し始めます。いまさら店舗を移転できず、返済金の重圧がのしかかり、資金繰りに詰まってしまうことになります。 資金のむだ遣いをしない、これも小売業・飲食業の経営にとって、忘れてはならない大切な留意すべき点です。 ‡B 資産圧縮の目のつけどころ 流動資産については、 現金は、つり銭のみの現金残高主義、掛売りなしの現金主義に徹する 売掛金はカード会社や信販会社と連携し、期日と金利を交渉して早期完全回収を図る。請求は締め日を月2回にし、早く請求書を送り、回収を早める 小売業の棚卸資産は、POSレジなどでの単品管理による在庫回転率を算出し、売れ筋は交差主義比率(商品回転率×粗利益率)による品揃えと、適正在庫管理を行う。死に筋(デッドストック・スリーピングストック)の活性策を講じる 飲食業の棚卸資産は、曜日別・月別の適正在庫量の把握、主原材料は毎日棚卸、メニュー別仕込み量をおさえ、冷蔵庫・冷凍庫の整理・清掃を徹底する 固定資産については、 土地・建物は、保証金・敷金の賃借、賃料の売上歩合方式。またはフランチャイズシステムによる展開。設備は、リース・レンタルの活用、中古の利用を考える などが挙げられます。 |
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