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連載19 IV 銀行との上手な付き合い方(7)

7 銀行から有利な融資を引き出す方法

(1)無担保融資の資金調達
? 「信用貸し」という無担保融資
 銀行融資で「信用貸し」というと、いわゆる無担保での融資を意味します。銀行の信用を得るためには、まず会社の営業基盤を強化し、財務内容を改善するなど、文字通り信用力を高めるのが最優先課題であることはいうまでもありません。
 「銀行は担保がないと貸してくれない」とよくいいますが、将来性があり魅力ある経営をすれば、担保がなくても銀行は融資します。将来の優良な資産構築を図るために、銀行は融資しなければならない事情があるのです。

? 支店長決裁での無担保枠
  銀行には「信用限度」というものがあります。信用限度とは、この範囲内であれば、支店長決裁により担保がなくても融資を受けることが出来るという金額の上限のことです。 
支店長が通常決裁できる信用限度は、都市銀行のケースですと都心の支店で1億5千万円から2億円程度、郊外の店舗で1億円程度です。
「この会社は将来きっと成長する。社長は信頼できる人物だ。担保は無いが、できるだけの支援をしたい」となれば、信用限度までなら支店長決裁によって担保なしで融資を受けることが可能なわけです。
 しかし、実際の融資ではなかなかここまで信用枠を得るのは難しいのも事実です。銀行から無担保融資での融資を得るためには、いかに将来性がある会社なのかという点をうまく説明できるかがポイントになります。小さいながらも将来性のある会社は、銀行にとって魅力があります。
 無担保での融資は今後、おのずと増えていくものと思われます。

(2)信用保証協会の有効活用
? 融資枠を増やすには信用保証協会を利用する
 信用での資金調達が難しい会社は、信用保証協会を活用することです。平成7年の法改正により、保証合計額3500万円までは原則として無担保で保証を受けられることになりました。実際にいくら保証してもらえるかは会社の業績などによりますが、まだ利用してたことの無い場合は、銀行経由で申し込むより、直接保証協会の窓口を訪ねた方が審査のポイントがよくわかります。
 保証協会は全国どこの都道府県にもあるので、身近な支所を訪問するとよいでしょう。保証の相談にいくときには、会社の内容や業況がわかる資料と、本人の確認ができる身分証明書を持参します。保証を得ることが出来れば、それを条件に銀行に融資を申し込めばいいのです。保証協会の保証があれば、もちろん銀行は無担保で融資に応じてくれます。

? 信用保証制度利用の実際
 信用保証協会は、信用力の低い中小企業に円滑な資金調達を行わせることを目的とし、所轄地域内の中小企業が民間金融機関から借入れする場合の保証業務を行っています。
 保証付き借入れを行った債務者が返済不能になった場合には、保証協会が銀行に対し企業の代わりに代位弁済を行うため、銀行にとってはきわめてリスクの低い有利な融資となります。

ア 保証を受けられる企業の条件
  資本金3億円(卸売業は1億円、小売・サービス業は5千万円)以下の法人・個人です。

イ 信用保証限度額
 法人・個人を問わず保証限度額は2億5千万円で、うち無担保保証枠の上限は3500万円と決められています。
 ただし、資金の使途を特定(経営安定化・設備・新規事業など)した融資保証については、個々に保証限度額が定められています。

ウ 資金使途
 事業資金(運転資金・設備資金など)であれば、原則的に可能です。

エ 貸出金利・保証利率
 信用保証付き融資は信用保証協会の資金が使われるのではありません。実際は、銀行が保証を前提に自らの資金で貸出しをするものです。このため信用保証協会が特に定めた金利以外は、原則として銀行の裁量に任されています。保証料についても同様で、原則は1%ですが、融資内容によっては保証協会が原則を下回る保証料率を定めることがあります。

オ 担 保
 無担保保証制度を超えるものは当然として、限度以下の場合でも担保が必要な場合が大半です。これは保証内容と企業内容を検討し、臨機応変に対応するという趣旨からです。

カ 連帯保証人
 担保提供の有無にかかわらず、連帯保証人は必要となる場合が大半です。昨今の「代位弁済」の増加を背景に、保証人の審査は厳格化しており、特に新規申し込みについては、家族など債務者の身内でなく純然たる第3者保証人を要求するケースが増えています。

?信用保証制度のメリット・デメリット

 信用保証制度を利用するメリットは次の通りです。

ア 保証限度額が高い
 上限2億5千万円の保証限度額は一般の中小企業の資金需要を満たすには充分です。また、実際の運用は別として、無担保保証限度3500万円は、担保能力の低い中小企業にとっては使いやすい融資です。

イ 有利な担保評価
 銀行の担保評価掛け目は鑑定価格の60%程度が限度です。
 一方、信用保証協会の担保評価は一概にはいえませんが、銀行より緩和されている場合が多く、掛け目70%程度に評価することもあります。担保不足に悩む中小企業にとって、見逃せないメリットといえます。

ウ 保証料率の優遇
 保証料率は補償額の1%が基本です。しかし、特定の融資保証についてはそれを下回る保険料率を適用することがあり、場合によっては、さらに有利な資金調達が可能となります。

エ 固定金利の適用
 保証付きの貸出金利は、銀行に一任するのが原則ですが、特定の融資保証については固定金利が適用されるものもあります。金利上昇局面での低金利で長期の資金調達は、企業にとっては大きなメリットがあります。

 一方、デメリットとしては、次のようなものがあげられます。

ア 保証料の負担
 今日の低金利時代にあっては、保証料率がいかに低くても、企業負担は大きいといわざるをえません。短期資金の場合は2%の貸出金利が普通であり、1%の保証料負担は過大なものといえます。

イ 第3者保証人
 信用保証に際して要求される第3者保証人の手当が難しいことです。第3者であれば誰でもいいというわけではなく、せっかく保証人を立てても受け入れられない場合もあります。

ウ 資金使途の制限
 保証付き貸出の資金使途は事業資金ですが、融資後もその実態調査は厳格に行われ、使途違反と認定されると最悪の場合、一括返済を要求される場合があります。

?信用保証の申し込み方法

ア 銀行経由の場合
 信用保証付き融資の申し込みは、銀行の窓口を通じて行うのが一般的です。信用保証委託申込書などの書類を銀行経由で信用保証協会に送付する仕組みであり、忙しい企業側にとってメリットは大きいといえます。
しかし、経由銀行に資金調達の計画の全容を把握され、融資金の使途について干渉を受けやすいというデメリットもあります。

イ 直接訪問による申し込み
 企業が信用保証協会の窓口を訪れて交渉する方法で、提出書類の完備など、企業側に事務負担がかかります。しかし、直接交渉であるため迅速な回答が得られ、双方の感触が把握しやすいことから良い結果となるケースが多くあります。
 また、現在取引している銀行に資金の調達計画を知られることもなく、取引銀行を変更したいと考えている場合には、取引希望の銀行に「斡旋融資」の形で保証書送付が可能となるなど、大きなメリットがあります。

?保証付き融資を受ける場合のチェックポイント

ア 返済条件のチェック
 各地区の保証協会は企業のニーズに応じた各種の融資を取り揃えています。これらの融資を選択する場合の着眼点は、融資金額や資金使途以外に返済条件があります。返済期間の長短や、金利体系(変動・固定)、返済方法もしっかり検討する必要があります。

イ 返済期間の長短
 長期返済は月次の返済は楽ですが、長期化すればそれだけ資金負担は多くなります。業績予想に応じて、必要最低限の返済期間にすべきです。

ウ 金利体系
 金利動向と返済期間を検討し、有利な選択をする必要があります。金利上昇期には固定金利、下降気配時には変動金利にするといった敏感な対応が求められます。

エ 返済方法
 返済方法(元利均等分割返済と元金均等分割返済)の得失と自社の資金事情を考え、最適な返済方法を選択します。

?旧債振替には応じない
 取引銀行経由で保証申込みを行った場合、銀行は融資の一部で既存融資を返済するよう要求することがあります。これを「旧債振替」といいます。これは信用保証協会の取扱い上、明確な保証否認の対象になりますが、銀行はそれらの処理を債務者の希望によるものとして取り繕おうとします。
 企業としては、保証料負担までして獲得した貴重な融資を、既存債務の返済に当てることは避けなければなりません。
 銀行の要求を断固拒否する覚悟が必要です。

?担保を信用保証協会に移管する
 取引行から信用保証付き融資しか受けていない場合は、迷わず信用保証協会に担保を移管すべきです。

?斡旋融資の形で身の丈に合った銀行を選択する
 直接申込みの場合、企業の希望が尊重されます。銀行取引変更を考える際は、斡旋融資に持ち込むのが極めて有効です。

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