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最終回 米国における税務訴訟

1 アメリカにおける税務訴訟の特長
 アメリカにおける税務訴訟の特長は、次の2点です。第1点は、アメリカの納税者は税務訴訟をを提訴するにあたり、手続き上の相違はありますが、裁判所選択権を有しているということです。第2点は、日本では憲法の規定により特別裁判所は設置する事ができません(憲法76‡A)。したがって、租税裁判所の設置はありませんが、アメリカにおいては税務訴訟のみを審理する裁判所としての租税裁判所が設置されているということです。

2 アメリカにおける裁判所選択権
 納税者が提訴するにあたっては、自己に有利であると思われる裁判所を自由意志で選択できる権利を、裁判所選択権といいます。このことは、アメリカにおいては複数の裁判所が用意され、かつ、各々の裁判所の機能が異なるということです。

(1)裁判所の種類
 提訴できる裁判所としては、租税裁判所、地方裁判所及び請求裁判所の3つが用意されています。そうして、地方裁判所及び請求裁判所は租税のため特別な裁判所ではないために、IRS(内国歳入庁)の査定した不足税額を納付した後に提訴することができる、事後審理としての還付請求裁判になっています。これに対して、租税裁判所は、税務訴訟の専門裁判所であることから、その不足税額を納付しないで提訴できる裁判所となっています。

(2)各裁判所の機能
 租税裁判所は、19名の租税専門の裁判官で構成され、この裁判官は、任期15年として機会承認後大統領によって任命されます。本部はワシントンD・Cに置かれ、定期的に主要都市を巡回(11巡回区及びコロンビア特別区)する巡回裁判所として位置付けられています。裁判における代理人は、IRS(被告)側は、IRS所属弁護士によって代理されます。しかし、納税者(原告)側の代理人は、地方裁判所及び請求裁判所と異なり裁判所の許可を得て弁護士以外でも代理人になれます。裁判は、口頭弁論により行われ、立証責任は、通常納税者側にあるとされています。

 次に、地方裁判所で、税務訴訟のみならず地方の紛争事案を各州任命の裁判官が審理します。同裁判所の特質は、税務訴訟において唯一陪審員を採用することができることです。また、還付請求裁判であることから、納税者の立証責任は、租税裁判所のように行政処分が違法であるというだけでは足りず正当と思われる納税額まで立証する必要があります。

 最後に、請求裁判所は、アメリカの法定裁判所です。この裁判所の裁判官16名は、議会の助言と承認に基づいて大統領より任命されます。租税に関する知識は、租税裁判所の裁判官のような専門知識はありませんが、地方裁判所の裁判官より専門的知識を有しているといわれています。その本部は、ワシントンD・Cに設けられていますが、提訴納税者の地理的事情を考慮してその居住地等で法廷を開くといった配慮をしています。納税者の立証責任については、この裁判所は、紛争事案について公平の視点から積極的に判断しようとしていることから、その証明採用が寛大であるといわれています。

(3)納税者の選択
 納税者が、税務訴訟を提訴する場合に、‡@不足税額を支払う余裕がない者は、租税裁判所に提訴することになります。‡A法律上の解釈の相違による場合は、専門裁判官で構成されている租税裁判所に提訴する方が有利でしょう。また、‡B不当課税と判断されますが、納税者に立証証拠が不足する場合には、請求裁判所に提訴するのが有利でしょう。さらに、‡C所得はありますが、不慮の災害・事故等で納税できず減免を提訴する場合には、陪審制度のある地方裁判所が有利でしょう。

 なお、IRS職員の権利の乱用による不当課税については、陪審員が審理に加わる地方裁判所に提訴するのが有利でしょう。さらに、各裁判所とも上級裁判所に控訴することができます。

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