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第4回 税務行政のあり方 その1

 「租税は法律に従って課税される」を内容とした租税法律主義について、前回まで、法律が不公平であっては、適正な租税制度は育たないという視点から、その法律をどのように是正すべきであるかについて述べました。

 今回から、租税法律主義の内容の「法律に従って」の中の「従って」という税務行政について述べることにしたいと思います。

1 租税法律主義と税務行政との関係
 行政は法律の執行機関として存在します(憲法73)。このことは、‡@行政は、法律の範囲内における命令を発することができる、‡A行政は、法律の範囲内における執行をすることができる、という2つのことを意味します。

 すなわち、具体的には通達等の発遣も税務調査等も法律の範囲内で執行しなければならないということを憲法が宣言しているということができます。そこで順序として、まず通達等の発遣が法律の範囲内で行われているかという点を検証し、次に税務調査等の執行が法律の範囲内で行われているかという点を検証し、最後にこれらを含めて、1998年に行われた米国の「内国歳入庁(IRS)再編成改革法」は、どのように行われたかを述べて、わが国の税務行政の参考としたいと思います。

2 従来の通達等の発遣についての改善
 平成12年11月10日に総務庁は、国税庁に対して「税務行政監察結果に基づく勧告」(以下、単に「勧告」といいます)を行いました。

 この勧告は、申告納税制度の下における適正かつ公平な課税のために、国税庁は‡@基盤整備、‡A環境整備、‡B適正な事務運営、‡C申告手続の負担軽減等の4つの項目について是正すべきだとしています。 そして、‡@・‡Aが主として通達等の発遣に係るものであり、‡B・‡Cが主として税務調査等の執行に係るものです。

 そして、この勧告を受けて従来の税務行政、特に通達等の発遣は、相当程度に改善されたといえます。

(1)基盤整備に係る勧告
 申告納税制度は、納税者の申告により原則として納税額が確定する制度です。そして、その申告は、納税者が行い課税庁が行うものではないので、納税者の申告に係る有用な情報を適正に公開、または協議を行うことは、申告納税制度の基盤であるから、この点を整備すべきであると勧告したわけです。

 具体的には、第1に、国税庁幹部の監修による出版物としての質疑応答集の内容を信用して申告した納税者に係る課税処分・訴訟事件が発生(例:パチンコ平和事件・外国親会社からのストック・オプション事件)したことから、今後は国税庁において点検するとともに国税庁長官による統一した通達として明定すべきだとしました。第2に、環境の変化に伴い新しい経済事象(例:移転価格税制)が発生することから、国税庁は納税者に帳簿書類等を持参させたうえで、積極的に事前協議に応ずるべきだとしました。第3に、事前協議も含めた国税庁の質疑応答等については、極力公表するべきだとしました。

(2)環境整備に係る勧告
 申告納税制度は、納税者に不十分な環境を造ってはならないという観点から、国税庁が内部通達として情報・事務連絡及び指示という名称を付している部内の取扱いの中には、納税者に有利なもの(例:海外渡航費り取扱い)もあり、また、納税者の利害に大きな影響を及ぼすもの(例:重加算税の賦課基準)もあるので公開するべきであるとしました。

3 国税庁の対応
 この基盤整備・環境整備の勧告については、国税庁は真摯に受け止め、平成12年末までに所要の措置を講じたところです。

 しかし、これで法律の範囲内の命令執行であるとは未だいえないと思われます。その点については、次回に述べることにします。

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