
資産の評価損とは、低価法の適用又は減価償却以外によって資産の評価を行い、その帳簿価格を減額するとともに計上する損失をいいます。
法人税法は取得原価主義が原則ですから、別段の定めにより評価損の損金算入は認めていません(法人法33‡@)。ただし、例外として棚卸資産、有価証券、固定資産及び繰延資産について災害による著しい損傷等の場合には評価損の損金算入を認めています(法法33‡A)。
また、企業会計のグローバル化により新会計基準が導入され、法人税法における資産の評価損の規定も改正されています。すなわち、売買目的有価証券については、時価会計の導入により、時価評価による評価益の益金計上とともに評価損の損金算入も認められることとなりました。
|
当社は上場株式を保有しています。税法改正で株式の時価評価により評価損の損金算入ができるようになったようですが、このことについて法人税法の取扱いを教えてください。
平成12年度の法人税法の改正により、平成12年4月1日以後に開始する事業年度から売買目的有価証券については時価会計の導入により、時価評価による評価損の損金算入が認められることとなりました。この場合の売買目的有価証券は下記のいずれかの有価証券をいいその評価損の金額は、損金算入されます(法法61の3‡@)。ただし、Q2で述べる企業支配株式等は適用されません。
‡@ 専坦者売買有価証券として次に該当する有価証券 イ 内国法人が取得した有価証券であること ロ 専門の担当者が短期売買目的で取得した有価証券
‡A 取得日に短期売買目的で取得したものである旨を帳簿書類に記載した有価証券(上記‡@を除く)
‡B 金銭信託のうち、その信託財産となる金銭を支出した日にその信託財産として短期売買目的有価証券を取得する旨を帳簿書類に記載したもののその信託財産に属する有価証券
上記のうち‡@はトレーディング業務に係る有価証券であって、金融機関の特定取引勘定に属する有価証券が典型的なものです。具体的には、独立の専門部署を設置することが必要ですので一般的ではありません。
‡Aは専門部署を設置しない法人でも、有価証券の取得に関する帳簿書類に勘定科目を「短期売買目的有価証券」として区分記載することで認められます。なお、事実上短期売買を繰り返していても、区分記載がされていないと、売買目的有価証券とは認められないことに留意してください。
当社は非上場の100%子会社株式を保有していますが、業績が悪く有価証券の評価損の計上を検討しています。このことについて法人税法の取扱いを教えてください。
上記の質問のとおり、企業支配株式等は売買目的有価証券には該当しません。しかし、従来からの規定により、次のような場合には、評価損の損金算入が認められます(法法33‡A、令68‡A)。
‡@ 売買目的有価証券については、価格が著しく低下した場合 ‡A ‡@以外の有価証券については、発行法人の資産状態が著しく悪化したため、その価格が著しく低下した場合 ‡B その所有する法人について、社会更正法等による更正手続開始の決定又は商法の規定による整理開始の命令があったことにより、その有価証券につき評価換えの必要性が生じた場合。
上記‡Aに該当すれば評価損の計上が認められます。この場合に「資産状態が著しく悪化」とは以下のいずれかに該当する場合です。
イ 商法の規定による整理開始の命令等があった場合 ロ 期末における発行法人の純資産価格が取得時の純資産価格のおおむね50%以下となった場合
また、「価格が著しく低下」とは、期末におけるその有価証券の価格が帳簿価格のおおむね50%以下となり、かつ、近い将来回復が見込まれない場合です。
当社は婦人服の販売を行っていますが、流行のサイクルが早く、売れ残りの商品が相当数あります。そこで棚卸資産の評価損の計上を検討しています。このことについて法人税法の取扱いを教えてください。
次のような場合には評価損の損金算入が認められます(法法33‡A、令68‡@)。
‡@ 災害により著しく損傷したこと ‡A 著しく陳腐化したこと ‡B その所有する法人について、社会更正法等による更正手続開始の決定又は商法の規定による整理開始の命令があったことにより、その棚卸資産につき評価換えの必要が生じた場合 ‡C ‡@から‡Bに準ずる特別の事実が生じた場合
上記‡Aに該当すれば評価損の計上が認められます。この場合の「著しい陳腐化」とは物質的な欠陥ではなく、経済的な陳腐化ですので、下記の場合をいいます。
イ 季節商品が売れ残り、今後通常の価格では販売できないことが既往の実績その他事の事情に照らして明らかであること ロ 新製品が発売されたことにより、今後通常の方法により販売することができないようになったこと
当社は金属加工業を行っていますが、新規の受注を見込んで機械設備を購入したものの、思うように受注ができず、機械設備を使用しないまま、数年が経過してしまいました。そこで、固定資産の評価損の計上を検討しています。このことについて法人税法の取扱いを教えてください。
次のような場合には固定資産の評価損の損金算入が認められます(法法33‡A、令68‡B)。
‡@ 災害により著しく損傷したこと ‡A 1年以上に渡り遊休状態にあること ‡B 本来の用途に使用されることができないため、他の用途に使用されたこと ‡C 所在する場所の状況が著しく変化したこと ‡D その固定資産を所有する法人について、会社更生法等による更正手続開始の決定又は商法の規定による整理開始の命令があったことにより、その固定資産につき評価換えの必要が生じた場合 ‡E ‡@から‡Dに準ずる特別の事実が生じた場合
上記‡Aに該当すれば評価損の計上が認められます。この場合に、その機械設備は事業の用に供していないのですから、減価償却費の計上はできないことに留意してください。

資産の評価損と類似するものに低価法の適用がありますが、低価法は取得原価主義を前提とした棚卸資産の売上原価及び有価証券の譲渡原価を計算する場合の期末評価方法です。
今回の改正で有価証券については低価法が廃止になりました。また、金融商品については売買目的有価証券以外にも満期保有目的債権について償却原価法による期末評価が認められ、デリバティブについても時価による期末評価が認められています。
従来の資産の評価損は上記の他に繰延資産についても損金算入できる場合があります。
|