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第3回 「申告納税の手続~青色申告制度~」税理士 古川 正人

 法人税は、所得税や相続税と同様に申告納税制度をとっています。つまり、法人みずから所得金額や税額を計算して、申告書の提出を行って納税することにより原則として納付すべき税額が確定するという制度です。そこで今回は、申告納税に関連する手続きについて解説します。

青色申告書を提出するには、いくつかの要件があるといわれますが、どのような要件があるのでしょうか。また、青色申告には、どのような特典がありますか。

青色申告書を提出するためには2つの要件があります。‡@法定の帳簿書類を備え付けて取引を記録し、かつ、保存することです。

 具体的には、資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を複式簿記により整然と、かつ、明瞭に記録して、その記録に基づいて決算を行い、一定の科目をもって貸借対照表及び損益計算書を作成することです。

 また、帳簿書類の種類により5~7年間整理保存することも要件となっています。

 もう一つは、‡A納税地の所轄税務署長に『青色申告の承認申請書』を提出して、あらかじめ承認を受けることです。申請書の提出期限は、原則として、青色申告の承認を受けようとする事業年度の開始の日の前日までとなります。

 なお、新設法人の場合は、設立の日から3ヵ月を経過した日と事業年度終了の日のいずれか早い日の前日が期限となるので、第1期から青色申告書を提出するためには、申請書の提出期限に注意する必要があります。

 青色申告の特典は、‡@欠損金の翌期以降5年間の繰越し、‡A欠損金の繰戻しによる法人税額の還付、‡B設備や機械等を取得した場合の特別償却や法人税額の特別控除、‡C推計による更正又は決定の禁止、‡D更正があった場合の異議申立てと直接審査請求の任意選択ができることなどが挙げられます。

 青色申告には上記のような特典がありますが、法定の帳簿書類の記録、または保存が行われていない場合や確定申告書を提出期限までに提出しなかった場合などの事実がある場合には、その事実があった事業年度にさかのぼって青色申告の承認が取り消されます。

 

3月決算の当社は、親会社との関係で株主総会が5月から6月になりますが、確定申告書をいつまでに提出すればいいでしょうか。また、何か手続きをする必要がありますか。

確定申告は原則として、株主総会等の承認を受けた決算内容に基づき、事業年度終了の日の翌日から2ヵ月以内に所轄税務署長に提出して、申告書に記載された税額をその提出期限までに納付しなければなりません。

 ただし、災害その他やむを得ない理由がある場合や会計監査人の監査を受けるためなど2ヵ月以内に決算が確定しない場合には、法人の申請により特例として申告期限を延長することができます。したがって、事業年度終了の日までに『申告期限の延長の特例の申請書』を提出することにより、原則として申告期限を1月間延長することができます。

 申告期限については、国税通則法で規定されており、日曜日、国の祝日、一般の休日又は土曜日に当たるときは、その翌日が申告期限となります。また、申告期限が、12月29日~31日に当たるときは、翌年1月4日(4日が日曜日のときは5日、4日が土曜日のときは6日)が申告期限となります。

 申告期限の延長の特例を受けた場合には、期限内に申告納税している法人との権衡を図る観点から、法定申告期限から延長された期間に応じて年7.3%(特例措置として現在は4.5%)の利子税が課せられます。これは約定利息的な性格を有することから所得金額の計算上、損金に算入することができます。

 

9月になると中間決算といったことをよく耳にしますが、中間申告の制度とはどのようなものなのでしょうか。また、全ての法人が対象となるのでしょうか。

事業年度の期間は、1年以内であれば任意に定めることができます。そこで、その期間が1年の場合と6月の場合とでは、納税額に対する金利負担に不公平が生じることになります。また、財政収入の平均化を図る見地からも中間申告制度が設けられています。

 中間申告は原則として、事業年度が6ヵ月を超える普通法人について、事業年度開始から6月を経過した日から2ヵ月以内に申告書を提出して、その申告書に記載された税額を納付しなければなりません。ただし、新設法人や予定申告(前事業年度の法人税額の2分の1を中間分として納付する)による税額が10万円以下の法人については、申告書の提出義務はありません。

 中間申告は、‡@事業年度開始の日以後6ヵ月を1事業年度とみなして、確定申告書と同様に申告書を作成する仮決算による中間申告と‡A前年度実績による予定申告のいずれかを選択することができます。なお、これらの申告書が期限までに提出されなかった場合には、前年度実績による予定申告があったものとみなされます。

 実務上は、前年度実績による予定申告の税額と仮決算により算出した税額のいずれか少ない金額により中間申告することになります。前年度に比して今年度の営業成績が思わしくないない場合や前年度に臨時的な収益があった場合など明らかに今年度の所得金額が減少するような場合には、資金繰りにも影響することから仮決算による中間申告を選択することになります。

 なお、中間申告の提出義務がある場合には、仮決算により計算した税額が10万円以下となった場合でも申告書を提出しなければなりませんので注意が必要です。

 

確定申告書の提出後に売上の計上漏れが判明した場合や期末棚卸の金額が過大に計上されていた場合には、どのような手続きをとればよいでしょうか。

納税申告書を提出した法人は、その後、申告書に記載した法人税額が過少である場合や欠損金額が過大である場合には、税務署長の更正があるまでに、課税標準や税額等を修正するため修正申告書を提出することができます。したがって、売上の計上漏れの場合は、法人税額が過少又は欠損金額が過大になることから、更正があるまでに修正申告書を提出することができます。

 なお、期限内に適正に申告納付した法人とのバランスをとるため、修正申告書を提出した場合には、延滞税や加算税のペナルティーが課されることになります。

 ただし、調査等により更正されることを予知したものでない場合、つまり自主的に修正申告書を提出した場合には、延滞税のみで過少申告加算税は課されません。

 納税申告書を提出した法人は、その後、申告書に記載した法人税額が過大である場合や欠損金額が過少である場合、または還付金が過少である場合には、原則として、法定申告期限から1年以内に限り、税務署長に対し、その課税標準や税額等について減額のための更正の請求をすることができます。したがって、棚卸の過大計上の場合は、法人税額が過大又は欠損金額が過少若しくは還付金が過少になることから、法定申告期限から1年以内に限り更正の請求をすることができます。

 なお、修正申告に対する延滞税との権衡から、還付金には一種の利息に当たる還付加算金が加算されます。しかし、更正の請求を受けた税務署長は、その請求に係る内容を調査して、その調査に基づき減額更正するか、又は、更正すべき理由がないかを判断することから、あくまでも調査が前提であるということを承知しておく必要があります。


申告納税に関するトピックス

 世はまさにITブーム。税務の世界でも電子データによる帳簿書類の保存やFD等による支払調書の提出が既に導入され、さらに、2003年の本格導入に向けて電子申告の準備が着々と進められていますし、電子自治体や電子政府なる構想も発表されています。

 また、IT革命により商取引も多様化・複雑化しており、サイバー税務署が電子商取引に監視の目を光らせて実績を上げています。

 申告納税に関する実務では、一つ一つの取引が仕訳されて、それらが積み上げられて決算書が完成するわけですから、申告納税の手段や方法がいかに便利になったとしても、やはり、実務の基礎は仕訳でしょうか。

4:棚卸資産の販売収益