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連載5 III イザという場合に役立つ無担保・無保証の制度融資の活用法(1)

1 制度融資のメリット

 制度融資とは、国民金融公庫や中小企業金融公庫など政府系の金融公庫や中小企業総合事業団、地方公共団体といった公的機関が扱う融資制度です。政府系金融機関から設備資金、都道府県からは運転資金をというように、2ヵ所から融資を受けることも可能です。資金の使い道に合わせて様々な制度が用意されているほか、制度融資には次のようなメリットがあります。

(1)固定金利で金利が安い
 ほとんどの公的機関は長期プライムレート(長期貸出最優遇金利)や、固定金利制度を導入しています。制度によっては、利子の補給という形で援助が受けられる場合もあります。

(2)返済期間が長い
 制度によっては運転資金が9年、設備資金は15年といった長期のものもあります。また、元金の返済が1年間据え置かれるケースもあります。

2 無担保・無保証の融資制度の活用

 制度融資のなかには、イザというときに役立つ無担保・無保証で借入れ可能な貸付制度があります。

(1)小規模企業共済契約者貸付
 この制度は小規模企業の個人事業主などを対象とした退職金の共済制度を活用したもので、小規模企業共済の加入者(共済金掛金者)であれば、貸付を受けることが出来ます。無担保・無保証人であるうえ、申し込み日に資金を調達できるのが最大のメリットです。

 「一般貸付」のほか「傷病災害時貸付」や「創業転業時貸付」もあります。

‡@ 資格・対象
 従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主または会社役員が対象となり、家族経営や自由業も利用できます。

毎月の共済掛金は1千円から7万円の範囲で、全額所得控除が認められます。

‡A 支給額・期間
 最高700万円まで借入が可能ですが、掛金を納付した月数に応じて、納付した掛金合計の7割から9割の範囲となります。貸付期間は金額に応じて、6ヵ月から5年の間で決められます。

 返済方法は貸付期間が6ヵ月と1年の場合は期限一括返済、2年、3年および5年の貸付は半年ごとの元金均等の割賦返済となります。

‡B 借入利率
 借入利率は金利情勢に応じて変わりますが、借入時の適用利率が返済期日まで変わらない固定利率です。

(2)経営改善貸付(マル経融資)
 各地の商工会や商工会議所の調査指導を受けると、無担保・無保証人で国民金融公庫へ融資の斡旋をしてくれます。国民金融公庫へ出向く手間がかからず、運転資金、設備資金の使途も問われません。

‡@ 資格・対象
 従業員が20人以下の事業主(商業・サービス業の場合は5人以内)

‡A 支給額・期間
 借入限度額は1千万円(一般枠550万円、特別融資枠450万円)で、運転資金および設備資金に使えます。返済期間は運転資金が5年以内、設備資金は7年以内で、いずれも据置期間は6ヵ月以内です。

‡B 借入利率
 原則として、長期プライムレートと同水準の利率が適用されます。

‡C 利用の条件
 商工会や商工会議所などの指導員による調査指導(無料)を受けることが条件になりますが、商工会や商工会議所への加入義務はありません。

(3)自治体の制度融資
 自治体の制度融資は、都道府県と信用保証協会と指定金融期間の3者協調の仕組みになっています。公的な保証人である信用保証協会の保証があれば、無保・無保証人で融資を受けられる制度があります。信用保証協会の保証を受けるためには、信用保証料と法人の場合は代表者の連帯保証が必要となります。

 東京都の場合は次のような制度融資があります。

‡@ 小規模企業向け長期資金融資
 従業員20人以下(卸売業・小売業・サービス業は5人以下)の個人事業者で、都・区市町村の無担保・無保証人の融資以外に、信用保証協会の保証付融資残高がないという条件があります。

 融資金額は最高1千万円で無担保・無保証人の借入れができます。借入期間は運転資金が7年、設備資金は11年で据置期間は6ヵ月です。

‡A 経営安定支援資金融資
 次のいずれかに該当する中小企業は、5千万円を限度に無担保・無保証で融資を受けられます。

・融資対象

ア 売上が前年と比較し3%以上減少しており、経営基盤の強化を図る企業

イ 親企業の移転・内製化・下請再編成・新分野進出などにより、事業活動に影響を受けている企業

ウ 国が指定した又は東京都へ届け出た倒産企業に対して関連債権を有する企業

エ 災害・公共工事・公害防止・取引先の事業制限により、事業活動に影響を受けている企業

オ 第三者からの借地賃貸借契約により事業用地を確保しているもので引き続き同一場所で長期契約を結ぶ企業

・資金使途
 運転資金は7年、設備資金は9年で据置期間は1年です。ただし、ウとエは運転資金のみ、オは設備資金のみです。

・貸付限度額
 最高8千万円までですが、5千万円超については、担保が必要となります。

・中小企業の範囲
 ここでいう中小企業は、表1に該当する企業を指します。中小企業基本法改正に伴ない拡大された新しい定義の中小企業です。

(表1)中小企業の定義の変更 >> 【図を新しいウィンドウで開く

 

3 制度融資以外の無担保・無保証融資制度

‡@ 生保・損保の契約者融資制度
 会社で生命保険や損害保険に加入している場合、「契約者融資システム」が利用できるケースがあります。これによって、掛金の累計実績や解約手当金の一定額以内の資金融資を受けることが出来ます。手続きも比較的簡単なので、銀行以外の貴重な資金源として、どのような方法でどのくらい借りることができるのか事前にチェックしておくと、イザという場合に役に立ちます。

‡A その他
 中小企業の業界には同業者による事業協同組合や商店街振興組合が各地に多数存在し、制度融資を転貸しているところが少なくありません。同業者から借金できる簡単な資金源ですから、生損保の契約者融資制度と同様、手続きの方法とどのくらい借入れ可能なのか、事前に調べておくと良いでしょう。

 なお、中小企業の貸し渋り対策として1998年10月に導入された「貸し渋り対応特別保証制度(金融安定化資金)」は今年3月末で終了の予定です。これに代わる金融対策として、通常の信用保証制度が拡充されることになりそうです。その場合、無担保借入れの上限は5千万円から8千万円に引き上げられますが、保証については通常の保証を要求されるものと思われます。したがって、これまでの「貸し渋り対応特別保証制度」に比べて、信用保証協会の審査は厳しくなるものと考えられます。

6:イザという場合に役立つ無担保・無保証の制度融資の活用法2