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第18回 「役員退職給与、使用人退職給与」税理士 辻 堅太郎 | ||||||
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1 使用人が使用人兼務役員となったその時点で、使用人分の退職給与を支払う場合 使用人が役員に就任した場合において、その法人の退職給与規定に基づいて、法人がその役員に対して役員となった時に使用人であった期間にかかる退職給与として計算される金額を支給したときは、その支給した金額は、退職給与としてその支給した日の属する事業年度の損金の損金の額に算入されます(基通9-2-25)。 使用人から役員に昇格したということは、会社との関係が、雇用関係から委任関係へと移り変わったということになり、役員として会社に引き続き勤務していたとしても、使用人としての身分関係は終了した、すなわち退職したと考えられるからです。 2 1のケースで使用人分の退職給与を支給している者に使用人兼務役員から常務・専務等の専任役員となった時点で、使用人兼務役員であった期間の使用人退職給与分を支給した場合 使用人兼務役員が専任役員となった場合に、その使用人兼務役員であった期間に係る退職給与として支給金額があるときは、たとえその額がその使用人としての職務に対する退職給与の額として計算されているときであっても、その支給した金額は、当該役員に対する賞与とされます(法基通9-2-25(注)2)。 税務の上では、使用人兼務役員といっても、役員は役員であって、常務取締役等になったとしても、それは単に役員としての地位の変動があったにすぎないのであるから、退職というような事実は全く存しないと考えられ、その支給額については役員賞与とされ、損金の額に算入しないことになります。 3 常務取締役等の選民役員になった時点で、使用人であった期間の使用人分と使用人兼務役員であった期間の使用人分とを合わせて支給する場合 使用人兼務役員は身分関係はあくまでも役員であり、ただその者が本来の役員の職務のほかに使用人としての職務にも従事しているという関係から、報酬及び賞与について特例を認めたものであるから、使用人兼務役員に対して支給する退職給与はすべて役員としての地位に基づき支給を受けるものであって、使用人兼務役員とされない役員となったからといって、現実に役員を退職しない以上、その時点において打切支給額を損金として認めることはできないとされています(基通9-2-25(注)2)。 しかしながら実務上、専任役員となった時点で、使用人分退職給与として、まとめて支給するケースがしばしば見受けられることを考慮して、次の条件を満たすものについては、当分の間退職給与として取り扱われることとされています。 (1)その給与の支給の対象となった者が既住に使用人から使用人兼務役員に昇した者(その使用人であった期間が相当の期間である者に限る)であり、かつ、その者に対してその昇格をした時にその使用人であった期間に係る退職給与の支給をしていないこと。 (2)その給与の額が使用人としての退職給与規定に基づき、その使用人であった期間及び使用人兼務役員であった期間を通算してその使用人としての職務に対する退職給与として計算されており、かつ、その退職給与として相当であると認められる金額であること(会社税務釈義)。 4 専任役員を退職した時点で、役員退職給与と使用人退職給与と合わせて支給する場合 この場合は退職という事実に基づいて支給されるのであるから、役員に対する過大退職給与の損金不算入以外については、使用人分、役員分にかかわらず全額損金に算入されます。 そして、過大な役員退職給与かどうかの判定については、使用人時代を含む勤務期間等を考慮して、その支給額が不相当に高額かどうかを判断することになります。
役員退職給与の損金算入時期 ‡A 特 例 ‡B 取締役会等で内定した金額を未払計上した場合
‡C 仮払経理をした役員退職給与 今回は紙面の関係で省略しましたが、役員退職給与については、過大な退職給与の損金不算入があります。何をもって過大とされるのか問題のあるところですが、平成10年度の税制改正において、役員と特殊の関係にある使用人、いわゆるみなし役員に対する過大な退職給与の否認規定が設けられています(法36の3、法令72の4)。 また、景気が回復しないため、役員退職給与の分割払いを行う企業が増加しているようですが、一般に3年程度までなら認められると言われています。余り長くなると年金扱いとされ、退職時に全額未払金として損金算入された金額が否認されないとも限りませんので留意して下さい。 |
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