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第5回 税務行政のあり方 その2

1 勧告以降の通達の発遣
 前号で述べたように、平成12年11月10日付の総務庁の国税庁に対する「税務行政監察結果に基づく勧告」(以下、単に「勧告」といいます)以降の通達の発遣は、相当程度に改善されたといえます。これに加えて情報公開法が2001年4月1日から施行されましたので、内部通達は国税庁になくなり、逆に国税庁ホームページを通じてすべての通達が明らかにされることになりました。

 したがって、申告納税を行う納税者及びその代理人である税理士は、その公開された通達が税法の範囲内であるかどうかを判断し、法律の範囲内になければ、日税連の建議、または国税庁のホームページを通じて意見を主張することができるようになっています。

 しかし、これで国税庁の通達すべてが、税法の範囲内に整備されたとする見方は早計だと思われます。

 それは、既住の通達までさかのぼって検討する必要があると思われます。

2 既住の通達の検討
 勧告は、その後の税務行政の適正化をモットーとしての基盤整備等を勧告したものであり、原則として既住の税務行政は、過去のものとして勧告を行わなかったといえます。そこで既住の通達は、殆どが現在も適用されており、そのなかに税法の範囲を逸脱している通達が見受けられます。そのような通達を身近なところから拾ってみたいと思います。

(1)財産評価通達における「不整形地」の評価
 相続税法における財産の評価は「当該財産の取得の時における時価」(相法22)により評価するとした個別時価評価を規定しています。そうして国税庁は、相続財産の評価に係る取扱いとして「財産評価基本通達」(以下、単に「評価通達」といいます)を定めています。その評価通達20(不整形地の評価)には、正常評価の最大40%までしか評価減を行わないとしています(参考・不整形地補正率表)。たとえば、相続人が「あの不整形地の時価は、整形地の20%位だ」と主張しても、評価通達に忠実な税理士は「この不整形地は、整形地の60%で申告しないと、税務署では申告是認にしてもらえない」と主張し、相続人に不本意な申告を行い申告是認及び納税を行ったとします。しかし、相続人は当該申告に不満ですから、そのことを他人に訴えます。そのようなケースでは、他の税理士が「税法は時価と規定しているのだから、個別時価を超過する評価で申告するのはおかしい」として鑑定書を添付して更正の請求を行った事例の68%は、前の申告書が法律以上に申告したとして減額されています。その結果、前の税理士は「余分な税金を負担させた」という理由で申告是認であっても、相続人から損害賠償の請求を受けることになります。

(2)日本銀行のぜいたく社宅の課税
 所得税法は、社宅の低額賃料についての経済的な利益については、課税することとされています(所法36)。それにもかかわらず、平成12年始めに国税庁が総力を挙げて取り組んだ、日銀支店長のぜいたく社宅に対しての税務調査の結果は、課税なしで終わり世間はあぜんとしました。これは、これに係る通達が、本来個人としての支店長の課税を規定している税法の規定であるのに、他の使用人の高額社宅家賃とプール計算をして支店長の低額社宅家賃に対する課税を除外している点に通達(所基通36―48)の大きな問題があるといえます。

3 結論
 すなわち、この二つの通達の例でみたように税法の範囲を逸脱した既住の通達が現在も適用されているところに問題があります。したがって、納税者及び税理士は、統一的又は制度疲労した既住通達を、まず租税法律主義の観点から早急に改正する努力を要求する必要があるといえます。

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