ゼイタックス |
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3.課税の公平を確保するための方法 | ||||||
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所得捕捉率の不均衡は実調率の低下がひとつの要因で、実調率を上げるためには税務職員数を増やすことが絶対的に必要。しかし、緊縮財政の中では無理な注文。では、「9・6・4」と称される課税の不公平を甘受しなければならないのか。諦めてしまえば不公平も常態となって「世の中というものはそのようなものなんだ」で過ぎてしまう。 そこで、今回は、課税の公平を確保するための方法として、職員増以外の手立てを考える余地はないのかを探ってみたい。ここでも、税務職員約4万人で構成する労働組合、国税労組の「税制に関する提言」を参考にする。提言では、税務職員の定員増を要望する一方で、課税の公平確保の見地から様々な提案を行っている。 まずは記帳義務の強化である。1984年に導入された記帳義務は、不動産所得、事業所得等の金額の合計額が300万円を超える者は帳簿を備え付け、総収入金額や必要経費に関する事項を簡単な方法で記録し保存することを義務付けた制度だ。提言は、記帳義務が一定以上の納税者に限られ、罰則規程が何もないことから実効性に乏しいという。 そこで、所得金額基準を廃止し、全ての納税者に記帳を義務付け、また、罰則制度も設けることを提言している。確かに、申告納税制度にとって記帳は不可欠な要素だ。だからといって、年間所得が300万円以下の零細事業者にまで厳密に記帳義務を求めて、大きな成果が期待できるのかは疑問があるところだ。仮に、納税者が記帳しないことで、大雑把な所得での申告しかできなければ、その不利益を甘んじて受ければいいのだ。 その不利益のひとつに推計課税がある。所得・法人税法では実額課税を原則としながら、納税者が記帳義務を怠って実際の収入や経費がはっきりしないケースや、調査において納税者が請求書や領収書などの帳簿書類の提出を拒む場合には、同業・同規模・同地域の他事業者の所得から推計して課税することを認めている。 ただし、実務上は問題が少なくない。例えば、帳簿の不提示などで推計課税された納税者が訴訟を起こした場合、「私は帳簿を出す意思はあったが、調査官の態度が悪かったから」とかの納税者の主張に基づく調査の状況を客観的に認定することが困難なことがある。また、後から帳簿を出してきて「実額は推計よりも少ない」と反論する納税者も数多い。 提言では、実額課税が行えない納税者が有利にならないような推計課税制度の規定の整備・強化を求めている。実際の調査の現場では、調査官の横暴な態度に納税者が反発することでの調査拒否といった事態もある。しかし、基本的には推計しなければ所得を確定できない状況を招く納税者は、その不利益を甘んじて受けなければいけない制度の実効性を高めることは必要なことだ。 |
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