ゼイタックス

第19回 「寄附金」税理士 田中 宏志

 法人税法でいう寄附金は、いわゆる社会通念上の寄附金、例えば神社・仏閣や学校、政党に対する寄附金のみならず、金銭その他の資産又は経済的な利益の無償又は低額での供与等も含まれます。

 また、法人が支出した寄附金のうち一定の額を超える部分の金額については損金の額にに算入されないことになっています。

 そこで今回は、法人税法上での寄附金の取扱いについて、解説してみたいと思います。

法人税法上の寄附金の範囲とその取扱いについて教えてください。

法人税法上の寄附金の額とは、「寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、法人が金銭その他の資産または経済的利益の贈与または無償の供与をした場合におけるその金銭の額もしくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額またはその経済的利益のその供与の時における価額によるもの」とされています(法法37?)。

 したがって、何らかの合理的な理由もなく債権を放棄したり、債務を無償で引き受けた場合も寄附金の額に含まれることとなります。

 ただし、資産を贈与等した部分であっても法人の事業遂行上の経費として明らかなものについては、寄附金の範囲からは除かれ、交際費や福利厚生費等の費用として取り扱われることとなります。これらの関係を図解すると次のとおりです。

法人の支出した寄附金の額の合計額のうち、一定額を超えた部分の金額は損金に算入されないとのことですが、損金算入限度額の計算方法を教えて下さい。

法人が各事業年度において支出した寄附金の損金算入限度額の取扱いは、その支出した相手先によって以下の3つに分類されます。
(1) 国、地方公共団体、さらに財務大臣の指定した寄附金
(2) 一般の寄附金
(3) 特定公益増進法人(教育又は科学の振興、文化の向上等公益の増進に著しく寄与するものとして法人税法施行令第77条において列挙された法人)に対する寄附金

※(1)の寄附金については、その支出した事業年度で全額が損金となりますが、(2)の寄附金は、その支出した寄附金の額の合計額のうち次の算式により計算した金額を限度とします。

{(その事業年度の所得金額×2.5/100)(申告書別表四の仮計)
+期末資本等の額×当期の月数/12×2.5/100}×1/2
= 損金算入限度額

 また、(3)の寄附金については、その特定公益増進法人に対する寄附金の額と、(2)の損金算入限度額とのいずれか少ない金額が損金となります。

 以上、これらをまとめると次の算式により、寄附金の損金不算入額を計算することができます。

(算式)
支出寄附金の額 - {国等への寄附金の額+損金算入限度額+損金算入限度額と特定公益増進法人に対する寄附金の額のいずれか少ない額}

= 損金不算入額

当社は、社長の出身校である県立高校の図書館建設(完成後は直ちに県に寄贈)のため100万円の寄附をしようと考えています。この寄附金は、国等に対する寄附金として全額損金算入が認められるのでしょうか?

国等に対する寄附金とは、直接国等に寄附をするものはもとより、その寄附金の目的である施設が完成後遅滞なく国等に帰属する場合には、その寄附金は国等に対する寄附金として取り扱われます。ただし、社長の出身校であることのみをもってされた寄附金については、社長に対する賞与とされ、その全額が損金不算入とされます(法基通9-4-2の2)。

 なお、この場合、社長個人が寄附をした場合には、社長個人の所得税の確定申告にあたり、寄附金控除の適用が認められます。

当社は、関連子会社であるA社の業績不振がここ数年続いていることから、その支援策として当社のA社に対する貸付債権を放棄しようと考えています。この場合の当社とA社の取扱いについて教えて下さい。

当社とA社は親子会社の関係にあると思いますが、税務上はあくまでも独立した法人格を有する別法人であって、当社がA社に対する債権を放棄することの合理的な理由がない限り、その債権放棄した金額は、当社のA社に対する寄附金となり、当社とA社では次のような取扱いになります。

(当社)
寄  附  金 XXX   子会社貸付金 XXX
親会社借入金 XXX   債務免除益  XXX

Q4の場合で、親会社が子会社に対する支援に合理的な理由がある場合には、親会社の寄附金課税はないのですか? また、ここでいう合理的な理由について教えて下さい。

親会社の子会社に対する債権放棄が、業績不振の子会社(子会社の範囲には、人的関係や取引関係等においての事業関連性を有するものを含みます)の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画等があり、その債権放棄をしたことについてこの放棄を行わず子会社が倒産した場合には親会社はそれ以上の損害を被るなどの相当な理由があると認められる場合には、その債権放棄による経済的利益の額は寄附金の額に該当しないものとして取り扱われます(法基通9-4-2)。ここでいう合理的な再建計画等であるか否かの判断にあたっては、次のような点に注意する必要があります。

(1)支援の合理性
 要支援額(総額)が、子会社等の被支援者の財務内容、経営状況の見通し等から的確に算定されているのか。また、子会社の自己努力を加味したものになっているか。

(2)支援者による債権管理の有無
 支援者が被支援者の再建状況を把握し、例えば、再建計画の進行に従い、計画よりも順調に再建が進んだような場合には、計画期間の経過前でも支援を打ち切るなどの手当てがされることとなっているか。

(3)支援者の範囲の相当性
 被支援者との事業関連性の強弱、支援規模、支援能力等からみて、支援者の範囲が相当であるか(これらの要素からいって同様の立場にある者が支援者になったり、ならなかったりしていないか)。

(4) 支援割合の合理性
 出資状況、経営参加状況、融資状況等の事業関連性の強弱や、支援能力からみて支援割合が合理的に決定されているか。

 法人税法では、親子関係を問わず、特段の事情なき債権放棄や無利息貸付等については原則として寄附金として取り扱われます。また、法人税法基本通達9-4-1・同9-4-2のなかで、やむを得ない事情による合理的な親子会社間での経営支援については、寄附金としないとした取扱いが規定されています。また、国税庁は、平成12年2月23日付の情報として「子会社等を整理・再建する場合の損失負担等に係る質疑応答事例等」を公表していますので、通達と合わせて参考にして下さい。

インデックスへ戻る