1 中小企業倒産防止共済制度の活用
この制度は、中小企業総合事業団による連鎖倒産を防ぐための共済制度です。取引先の倒産で売掛債権が焦げついた場合、無利子・無担保・保証人なしで、掛金の最高10倍、3,200万円の限度まで借りることが出来ます。掛金は毎月5千円から8万円までの範囲で一定の掛金を払い、焦げつきが発生した場合に申請します。
2000年3月末で43万社が加入し、融資実行額は昨年で約1,000億円にのぼっています。
この制度の特色は、次のようなものがあります。
(1)一時貸付金が受けられます 意外と知られていないのが、この一時貸付制度です。解約手当金の範囲内で、臨時に必要な事業資金を借りることが出来ます。期間は1年以内で、金利は金融情勢に応じて変動します。既加入者はいくらまで借りることが出来るか、確認しておくことをお薦めします。
(2)掛金は損金に算入出来ます 掛金は税法上、法人は全額損金として処理できます。個人の場合も全額必要経費として認められます。
(3)加入の資格は次に該当する中小企業です 製造業・建設業・運輸業は資本金3億円以下、又は従業員が300人以下です。卸売業は資本金3億円以下、又は従業員100人以下、サービス業は資本金5千万円以下、又は従業員100人以下、小売業は同5千万円以下、又は50人以下です。
2 連鎖倒産を防ぐための自衛策
いつやってくるかも知れない連鎖倒産を防ぐためには、何といっても取引先との日頃の付き合い方にいかに注意を払うかに尽きます。取引先が潰れた後で泣きごとを言っても、失ったカネは戻ってきません。そこで、予防のためのチェックポイントを次に掲げます。
(1)計数によるチェック
‡@ 取引先の決算書をチェックする 連鎖倒産のリスクを減らすために重要なことは、取引先の財務内容を知り、倒産のシグナルをしっかり把握しておくことです。
商品の販売先に財務データの提出を求めるのは難しいかもしれませんが、「すべての取引先から決算書をいただくというルールですので、ご協力下さいませんか」と持ちかければ、意外と簡単に応じてもらえるケースも少なくありません。取引先から受け取った貸借対照表と損益計算書のチェックのポイントは次の4つです。
ア 借入金の総額が売上高の50%以上に達しているかどうか? 借金が取引先の経営の重荷になっているだけでなく、銀行からも警戒される先です。借金の負担を十分にカバーできる利益が計上されていれば別ですが、そうでない場合は、銀行に運転資金の融資を打ち切られ、ある日突然、資金ショートを起こす可能性があります。
イ 借入金に対する支払金利の利率が7%を超えているかどうか? この取引先はすでに銀行との関係が悪化し、高利の商工ローンなどに手を出している可能性があります。その意味では、ただ借金が多いだけの企業以上に注意が必要です。
ウ 税引前利益に比べて納税額が著しく少なくないか? 納税額は税引前利益と税引後利益の差から推測します。このような取引先は、粉飾の疑いがあります。
エ 仮払金などの未清算の勘定が急増していないか? 仮払金などとして計上されている資金は、実際には回収不能の使途不明金になっている場合も少なくなく、これを損失として処理すれば、赤字に転落する可能性があります。これらをチェックしたうえで、心配な点がある取引先にはまず事情を聞き、改善を求ていくことが必要です。一向に対応しようとしない相手は取引を解消すべきです。
(2)相手先の経営者や社員のチェック 危ない取引先の見極めは、決算書の分析だけでは十分とはいえません。取引先からどうしても財務データが入手できない場合もありますし、データ自体が不正確であったり、期中に数字が大きく変わることもあるからです。
そこで、連鎖倒産を防ぐためには、経営者や社員が目・耳・足を使って、相手の情報を収集することも必要となります。いわば日頃の付き合いのなかで、信用調査会社の調査マンの視点を全員が持つようにするわけです。その際、役に立つのが次のようなチェックシートを利用することです。
‡@支払状況はどうか? ・支払が遅れがちだ ・支払日の変更が頻発するようなった ・手形サイトが長くなった
‡A販売状況はどうか? ・ダンピングが始まった ・在庫が異常に増えた(減った) ・異質の商品を取り扱うようになった
‡B取引状況はどうか? ・理由なく大量注文が出されるようになった ・担当者ではなく経営者・幹部から注文がでてくるようになった ・注文が激減した ・仕入担当者が頻繁に変わるようになった ・急に安売りをするようになった
‡C会社の雰囲気はどうか? ・経営者・経理担当者が不在がちだ ・従業員の退職が多発するようなった ・給料遅配が始まった ・社長や経営陣が、ヒソヒソ話をすることが多くなった ・ウサン臭い人が出入りするようになった
‡D経営者の行動はどうか? ・私生活が乱れてきた ・本業以外の仕事に手を出し始めた ・政治活動などに夢中になっている
‡E同業者のウワサはどうか? ・どこそこは危ないという話を耳にした
これらのチェックシートを頭の中に叩き込み、商談などで取引先を訪問した際に、社内の様子をそれとなく観察します。その結果をシートに記入し、該当項目の変化などをみて、どの程度信用していい相手なのかを見直すと良いでしょう。
3 効果を上げる売掛金回収の具体
(1)焦げつきを未然に防ぐ6つのポイント
‡@請求、催促を確実に行う 請求書の郵送だけでなく訪問・電話・FAXなど計画的に手を変え、内容も厳しくしていく。
‡A債務の確認を行う そんな請求書は受けとっていない、と言われないように内容証明を郵送し、残高を確認する。
‡B売掛金を手形にしてもらう 売掛金の時効は2年ということで、支払に対して罪の意識がない人もいます。しかし、手形は落とさないと不渡りになります。
‡C売掛金を公正証書化する 時効になりそうな場合、公証役場に行き債権残高を証明してもらいます。
‡D担保や保証人をつけてもらう 支払延期の依頼があったときに、担保の設定や保証人をつけるように強く働きかけます。
‡E手ぶらでは帰ってこない 手ぶらで会社に戻れません、と言って、少しでも支払ってもらうという固い決意が必要です。
(2)営業員の回収ノウハウ
‡@集金日をきちんと決める ‡A集金日には必ず訪問する ‡B感謝の気持ちを、言葉や動作に表わす ‡C朝一番など、訪問のタイミングを研究する ‡D手形・小切手・領収書は、両手で丁寧に扱う ‡E訪問したら、最初に集金する ‡F今日は払えない、と言われたら、支払日の確約を取り、自社に連絡を とり許可をもらう ‡Gサイトを延ばしてくれ、と言われたら自社に連絡をとってから処理を する ‡H支払ってもらったら、心から感謝の言葉と動作を示す。振込みの場合 は、お礼のハガキを出す
「集金は、自分の給料をもらう気持で」という営業の意識改革が何より重要と言えましょう。
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