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2.実地調査での1件平均申告漏れは過去最高

 所得の捕捉率が不均衡な原因のひとつに、納税者数に対する実地調査件数の割合である「実調率」の低下が挙げられていることを前回書いた。国税庁が2002年10月21日に公表した同年6月までの1年間の2001事務年度における所得税の調査状況でも、それが実証された形だ。

 同事務年度の調査件数は前年より5万件多い86万7千件に対して行われた。しかし、実地調査は7万2千件で前年より2万1千件も減っており、増えたのは電話や来署依頼で申告内容の疑問点を問いただす、調査するまでの必要がない「簡易な接触」という調査?なのだ。こちらは、7万1千件も増えている。

 税務当局はこの簡易な接触も含めて調査件数と称しているが、これは実調率の低下から世間の目をそらすための苦肉の策といえなくもない。昔の調査状況の公表には簡易な接触による数字などは出てこなかった。ともあれ、今回の実地調査の減少が要因で、見つかった申告漏れは2年連続で過去最低となる9,514億円だった。

 1件当たり平均では前年より35万円も少ない110万円の申告漏れとなる。長引く不況でごまかす所得も少なくならざるを得ないという見方もできる。ところが、実地調査だけをみると、実地調査7万2千件のうち、6万3千件から4,921億6,200万円の申告漏れを見つけている。1件平均683万円となるが、この数字はここ10年間では過去最高なのだ。

 実地調査を増やせば、申告漏れはもっと見つかると誰もが考えても不思議ではない。衆参両院は、28年間にわたって税制改正のたびに「税負担の公平を確保するために、定員の確保等に特段の努力を払うこと」との付帯決議を行っているが、28年間も繰り返しているのであれば、これはもう単なるポーズに過ぎなくなる。

 このような状況下、2000年度において2001年1月の中央省庁再編に合わせ「行政機関職員法」の改正による、公務員定員を10年間で25%削減することが盛り込まれたため、国税職員の定員も、計画削減分を新規採用が補えず大幅な純減が続いている。国税労組は「このままでは現在の税務執行水準の低下は避けられない状況」と訴える。

 「おい、おい、現在の執行水準からも低下してしまうのかよ」と思った方も多いだろう。お先真っ暗ではないか。国税職員を増やしてくれといったって、危機的な国家財政のなかでは無理な話である。それに、一体職員を何人増やせば適正・公平な課税ができるの、との疑問も湧く。果たして人数だけの問題なのだろうか。

(続く)

3.課税の公平を確保するための方法