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第3回 法律による納税義務のあり方 その2

(1)憲法から国会と行政を考える
 法律を公平に制定し、納税者の権利を保護するためには、国民は憲法を基礎として考える必要がある、と考えられます。

 憲法によれば、立法権は国会のみに与えられ、かつ、国会は最高機関として行政・司法をコントロールする作用を有しているものとして次のように規定されています。

〔国会の地位と立法権〕
 第四十一条 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。

 すなわち、国の立法は、すべて国会を通ずるとした国会中心主義として行われ、かつ、国会の議決のみで成立する国会単独立法として規定されています。

 したがって、行政は法律の確実な執行機関として、また、行政による立法は、法律を執行するための命令(執行命令)および特に法律の委任に基づく命令(委任命令)に限定されることになっています(憲法73)。

 そうした制度のなかで、どうして前号で述べたような納税者権利保護に欠けるような立法が行われたかの点について検討してみたいと思います。 

(2)内閣の発議権と立法
 まず、法律の発議権(いわゆる政府提案)を内閣、すなわち行政に認めているかということです(内閣法5)。そして、このことは、法律の成立を決定するのは国会の議決であるから、提案のみの場合には国会単独立法に反しないと解されています。

 次に、今次の行政改革以前、政府提案の国会答弁については、政府委員(行政官)が答弁に参加していたこと、最後に、当時の国会における質疑は、専ら野党が行っており、与党は法案の早期成立を目指していたので、与党議員は政府提案の内容について深く審議しなくても立法が行われていました。

 こうした結果、行政庁寄りの法律が創設されたものと考えられます。 

(3)立法とパブリック・コメント制度
 しかし、今次の中央省庁等改革としての行政改革により、国会における答弁は、政府答弁を排除し、議員答弁となったので今後は、納税者権利保護に欠ける法律の成立は少なくなるものと考えられます。

 そこで、今後の租税立法については、議員提案・政府提案にかかわらず原案を関係団体に示して意見を徴するパブリック・コメント制度を実行し、国会審議における資料として活用されることが重要ではないかと考えられます。 

(4)納税者の権利保護と請願権
 さらに、従来の租税立法における徴税当局の権限拡大・納税者の権利保護欠如の各条文については、専門家団体、例えば税理士会がその理由を付して建議(税理士法49の10)を行う必要があると思われます。そうして建議を受理した官公署(この場合には、国税については財務省、地方税については総務省になると思われます)が改正案を政府提案として国会に提出しない場合には、その建議事項について国会に請願(憲法16)を行う必要があると思われます。請願権は、国民の参政権の性格を有するものですから「これを受理し誠実に処理しなければならない」(請願法5)と定め、国会において請願が採択されたもので、行政において措置する必要のある事項は、国会から行政に送付されます(国会法81)。 

(5)おわりに
 このようにして、租税法律主義の第一歩は「税法を公平に制定すること」から始まるものと考えられます。このためには、今後の租税立法にどう対処していくか、ということと、従来の納税者保護に欠ける規定をどのように是正するか、の二つが必要であると思われます。

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