ゼイタックス

第9回 「受取配当等の益金不算入」税理士 山本 裕子

 法人が他の内国法人から配当等を受けた場合には、企業会計上は当然収益の額を構成します。しかし、法人税法上は「別段の定め」により、一定の申告手続きを条件として、受取配当等の金額の全部または一部を益金の額に算入しない規定を設けています。今回は、この規定の内容について解説します。

「受取配当等の益金不算入」の基本的な考え方(制度の趣旨)を教えてください。

法人税法においては、法人が内国法人から受ける利益の配当(中間配当を含みます。)又は剰余金の分配、公社債投資信託以外の証券投資信託の収益の分配(これらを配当等といいます。)のうち、特定株式等以外の株式等に係る配当等についてはその80%相当額を、特定株式等に係る配当等についてはその全額を、それぞれ益金の額に算入しないこととしています。

 配当金は、その配当を支払った法人の段階において、すでに法人税が課税された後の利益を支払財源としており、更にそれを受け取った法人の段階で再び課税をおこなってしまうと、同じ収益について二重に法人税が課税されてしまいます。この二重課税を排除する趣旨から、「受取配当等の益金不算入」の規定が設けられました。


受取配当等の益金不算入額はどのように計算されるのですか。

定株式等以外の株式と特定株式等に区分し、それぞれの益金不算入額を計算します。


 配当等の額から、その事業年度において支払う負債の利子の額のうち、配当等の元本である株式等に係る部分の金額を控除しているのは、負債の利子は当然に損金となるのに、その果実である受取配当等を全額益金不算入としてしまうと負担の公平を欠くこととなるため、受取配当等の額から控除することにしたものです。

 2 特定株式等
 上記の益金不算入割合が100%適用される「特定株式等」とは、次の‡@~‡Bまでに該当する場合の法人が有する他の内国法人の株式又は出資をいいます。

‡@ 内国法人が他の内国法人の発行済株式総数又は出資金額の25%以上をその配当等の額の支払い義務が確定する日以前6ヵ月以上引き続き有している場合。

‡A 他の内国法人が配当等の額の支払い義務が確定する日以前6ヵ月以内に設立された法人である場合には、他の内国法人の発行済株式等の25%以上の株式等を、その設立の日から配当等の額の支払い義務が確定する日まで引き続き有している場合

‡B 銀行持株会社が他の金融機関の合併新株券の交付を受け、これを当該銀行持株会社が最初に交付を受ける配当等の額の支払義務が確定する日まで引き続き有している場合。

配当は、外国の法人からのものや、証券投資信託の収益なども含まれるのですか。

受取配当等として益金不算入の対象となるのは、一般の内国法人から受けるものに限られ、外国法人や公益法人等、人格のない社団等、特定目的会社から受ける利益の配当などは、含まれません。

また、証券投資信託の収益分配金については、信託期間中に受けたものと、信託の終了又は一部の解約によるものとを分けて下記のように取り扱います。

当社は、株式の売買が多く、年間を通じて所有している株式数にかなりの変動がありますが、この場合は、何か異なる処理が必要でしょうか。

配当等の計算期間の末日以前1ヵ月以内に取得し、かつ、末日後2ヵ月以内に譲渡した株式等(短期所有株式等といいます。)の配当金は、益金不算入の対象とはなりません。また、同一銘柄の株式等を、2回以上にわたって取得又は譲渡したときは、一定の算式によって総平均的に譲渡が行われたものとして、短期所有株式の数を算出します。


受取配当等の益金不算入額の計算で、控除される負債利子とはどのようなものですか。

当期の支払い利子額(一般の支払利息額の他、手形の割引料や社債の発行差金などを含みます。)を基に、総資産に占める、特定株式等以外の株式等の額と特定株式等の額それぞれの株式等の割合を乗じて按分計算をします。(原則法)

(注) 特定利子額とは、明らかに株式等の取得のための負債の利子とは認められない支払利子の額です。

 受取配当等の額から控除する負債利子の額は、上記の原則法による計算のほか、平成10年4月1日以降に存する一定の法人については、簡便法という別の計算方法によることもできます。

 法人税法では、商法上は利益の配当とされないものであっても、その実質が利益の配当と変わらないものである場合には、みなし配当として、受取配当等の益金不算入の規定の適用を受けることができますので、所有株式等について減資や合併、解散、利益積立金額の資本組入れ等があった場合には、留意が必要です。

10:たな卸資産の評価